今後ますます減る可能性大! スポーツモデル以外で乗れるMTの輸入車6選 (2/2ページ)

フランスのルノーはMTの宝庫だった

4)ルノートゥインゴZEN

 日本ではR.S.(ルノースポール)やGTといったスポーツモデルと、カングーというニッチなクルマが中心となるルノーだけに、日本で販売されるルノーは普通のモデルのMT車もほかの輸入車に比べれば豊富に揃う。その一番手は末っ子のトゥインゴのベーシックモデルだ。

 そんなクルマだけに960kgという車格を考えたら軽いわけではない車体に、エンジンは71馬力、さらに5速MTと、絶対的な動力性能はターボの軽自動車にも及ばない。クルマ自体も全体的に「いいクルマ」とは言えないというのが率直なところだ。

 しかし少ないパワーを常識的なスピードでも惜しみなく使える点や、トゥインゴとトゥインゴの兄弟車となるスマートの上には、ポルシェ911しかないRR(リヤエンジン・リヤドライブ)を、MTを駆使して自分でシフト操作しながら安全な範囲で味わえるというのはトゥインゴZENだけの世界だ。

 さらに動力性能はターボの軽自動車に及ばない代わりに、価格も高い軽自動車と勝負できる171万円と日本車並なので、まったく方向性の違うクルマとして軽自動車や日本車のコンパクトカーを買う際の候補に挙げるのも面白い。

5)ルノールーテシアZEN

 日本車ならコンパクトカークラスに相当するルーテシアのベーシックグレードにも、トゥインゴ同様に5速MTが設定される。エンジンは900ccの3気筒ターボを搭載する。トゥインゴとルーテシアは同じ名前のZENというベーシックグレードなのに、ミッションの違いでエンジンまでトゥインゴのAT=1リッター3気筒ターボ、トゥインゴのMT=1リッター3気筒NA、ルーテシアのAT=1.2リッター4気筒ターボ、ルーテシアのMT=900cc3気筒ターボと異なる。芸が細かいというか……。

 細かいことは忘れて、ルーテシアZENのMTは価格も含め前述したプジョー208スタイルのMTの直接的なライバルで、どちらもベーシックグレードということもあって芯のある柔らかさを特徴とするフランス車らしい味を濃厚に持つ。

 この2台は甲乙つけがたい魅力を持つので、いい悪いではなく好みに合う方を選ぶと楽しいカーライフを送れるだろう。

6)ルノーカングーZEN

 日本で販売されるルノーの柱の1台であるカングーにも6速MTが設定される(エンジンは1.2リッター4気筒ターボ)。

 カングーの魅力はテーマからやや外れる感もあるが、「商用車を乗用車に仕立てた」という特に日本では敬遠されそうな成り立ちを見事に逆手に取ったこと。ガシガシという細かいことは気にせず道具っぽく惜しみなく使えることも含めた、「このクルマを買ったら新しい生活が待っているかもしれない」という期待を持たせてくれるじつに楽し気な雰囲気だろう。

 乗ってみても動力性能こそ特筆する点はないが、乗り心地の良さやファニーなスタイルとは裏腹に1830mmという全幅の広さも好影響し、高速安定性も含む意外な運動性能の高さを備えており、そこにクルマ好きならピクっと動いてしまう言葉の1つである”本国仕様”に近いMTで乗れるというのだからたまらない。

 またカングーは子供受けも非常にいいようで、筆者が聞いた話ではカングーが迎えに来ると子供たちは「(映画となりのトトロの)ネコバスが来た」という喜ぶこともあるそう。ここまでクルマを運転する親と乗客となる子供双方が幸せになれるクルマというのも珍しいと思う。

 輸入車の普通のクルマのMTというある意味スポーツモデルのMT以上にマニアックなモデルはここで挙げた6台でほとんどとなると思うが、そんなクルマも探してみれば見つかるものである。

 最近のMT車は楽しさに加え、クラッチ操作もフランス車は若干の慣れが必要な傾向はあるが、坂道発進の際にはブレーキを使って後退を抑えてくれる「ヒルホールド」などと呼ばれる機能が付いていることも多く、ちょっと練習すればブランクがあっても、運転しにくいというケースは少ない。

 さらにMT車は希少価値で処分する時の査定が有利になるケースも多く、金銭的なメリットもある(クルマを所有した期間で収支決算すると、エコカー減税が適応にならない、途中クラッチの交換があることもあるなど、必ず得とも言い切れないが)。それだけに車種の制限はあるともしても、もしMT車に乗れる環境があるなら一度勇気を出して試してみることを強くすすめたい。


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