マイナーチェンジも不発! テコ入れしても売れない国産現行車5選

売れ筋ジャンルにもかかわらず売れないモデルも

 発売されても売れ行きがいまひとつ伸びず、マイナーチェンジを行っても改善されない車種が少なからず見られる。それは大きく分けて、以下のような3つのパターンに分けられる(複数のパターンに該当する車種も多い)。ここではその内容と代表車種を紹介したい。

■日本のユーザーから離れて売れなくなった不発車

 以前は好調に売れていたのに、現行型、あるいは最近になって売れ行きを急落させたクルマがある。とくに海外向けの車種になり、日本のユーザーと向き合わなくなったことで、売れ行きを落とすケースが多い。海外を重視するようになって販売台数を下げるのは、当然の結果だろう。

 過去を振り返ると、日本では1990年代の中盤になって景気が後退した。1989年の税制改正で、3ナンバー車の不利はすでに撤廃されていたから、日本のメーカーはセダンを中心に海外向けの3ナンバー車と国内向けの車種を共通化した。その結果、販売台数を下げることに。ボディやエンジンの排気量も大きくなったが、それ以上に「日本のユーザーと向き合わないクルマ造り」が不振の原因だった。代表車種は以下の通りだ。

・日産スカイライン

 スカイラインはかつて絶大な人気を誇り、とくに「ケンメリ」の愛称で親しまれた4代目は、1973年に17万3912台を登録した。2017年のノート(e-POWERを含む)が13万8905台だから、これを上まわっている。1カ月平均ならば1万4493台であった。

 ところが2017年のスカイラインは2919台で、1973年の1.6%だ。近年のスカイラインが不振に陥った一番の原因は、内外装からボディサイズまで、すべてが北米を中心とする海外指向になって価格も高まったことだ。エンジンは発売時点ではV型6気筒3.5リッターのハイブリッドのみだったが、今ではメルセデスベンツから供給を受ける直列4気筒2リッターターボも揃える。しかし売れ行きは伸びない。

 今のスカイラインは、フロントグリルに日産ではなくインフィニティ(海外だけで展開する日産の高級車ブランド)のエンブレムを掲げる。「日本の顧客は相手にしてません」と自ら宣言したようなものだから、売れなくて当然に思える。

■売れ筋のカテゴリーなのにデザインや機能が悪い不発車

 3列シートのミニバン、あるいはハイブリッドなど、売れ筋カテゴリーに属するのに販売台数を伸ばせないクルマも見られる。先に述べた「日本のユーザーと向き合っていない車種」も多い。

・ホンダ ジェイド

 分類上は人気カテゴリーとされる3列シートのミニバンだが、サッパリ売れない。1カ月の登録台数は70〜100台で、2017年の月販平均が8700台になったフリード(プラスを含む)に比べると大幅に少ない。

 販売不振の理由は、ミニバンを好調に売るための条件にすべてハズレることだ。フリードのように販売台数の多いミニバンは、天井が高く(全高は1700mm以上)、3列目シートが広くて畳むと自転車も積みやすく、全長と全幅は5ナンバーサイズに収まる(エアロ仕様は3ナンバー車になっても構わない)。

 ところがジェイドは、天井が低く(全高は1530mm)、3列目シートは極端に狭い補助席。畳んでも自転車を積めず、全幅は全車が1775mmの3ナンバー車になる。さらに2列目シートの座面も奥行寸法が1列目に比べて55mm短いから、大腿部のサポート性が悪い。

 結局のところ快適に座れるのは1列目だけだ。発売時点では1.5リッターのハイブリッドを搭載しており、のちに1.5リッターガソリンターボも加えたが、売れ行きは伸びなかった。近々改めて大幅な改良を行い、2列シート仕様も加える。

・日産エルグランド

 背の高いLサイズミニバンだが、売れ行きは低調だ。まず全高は1815mmで1800mmは超えるが、ヴェルファイア&アルファードに比べると120mmほど低い。クルマの全高は、必要な室内高と最低地上高が確保されれば低いほど良いのだが、売れ行きになると話は別だ。エルグランドは貧弱に見えてしまう。

 しかも3列目シートは床と座面の間隔が不足して、座ると腰が落ち込むから窮屈に感じる。畳んだときの床が高いから、自転車も積みにくい。緊急自動ブレーキは設計が古く、歩行者を検知できず、売れ筋の2.5リッター車には装着できない。ハイブリッドも用意されず、悪条件が重なった。

・レクサスCT

 人気のカテゴリーとされるハイブリッド専用車で、ボディは比較的コンパクトだが、売れ行きは低迷する。プリウスとハイブリッドシステムを共通化した5ドアハッチバックだが、レクサス車とあって売れ筋グレードのバージョンCは価格が399万円と高い。JC08モード燃費は26.6km/Lにとどまる。3ナンバー車の割に後席が狭いものの、改良を行って安全装備を充実させたが、ほとんど売れ行きは伸びていない。

■もともと売りにくいカテゴリーだから不発

 不人気のカテゴリーに属するため、売れ行きを伸ばせない車種もある。分かりやすいのはクーペで、2000年以降は人気を大幅に下げた。クーペについても、不振の原因を探れば主力車種の廃止とか、商品開発が日本のユーザーを離れたことに行き着く。それでも今はクーペというだけで売れず、突出して優れた商品を開発しても1カ月の販売台数が1万台を超えることは考えにくい。

・日産GT-R

 発売から10年以上を経過した今でも、日本で最高峰のスポーツカーだ。価格はピュアエディションが1023万840円だから、発売当初に比べて250万円近く値上げされているものの、優れた走行性能を考えれば今でも割安と判断できる。改良も頻繁に行い、発売当初と現在では、まったく違うクルマになった。もはやフルモデルチェンジに相当する改良を受けている。

 しかしサッパリ売れない。レクサスLSが毎月2000台以上を登録するのに(納車を開始した直後の新型車ではあるが)、GT-Rは30〜60台だ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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