ハイブリッド車のカタログ燃費と実燃費がガソリン車に比べかけ離れるワケ

複雑な制御が可能なゆえにモード走行に合わせやすい

「ハイブリッドは、実燃費との乖離が大きい!」といった声は、あちこちで聞きますね。何故でしょうか? それはカタログ燃費が良く出過ぎるからです。実燃費が悪いというのは、つまりカタログ燃費との差が大きいことであり、それはカタログ燃費が良過ぎるからなんですね。

 実際にハイブリッドカーの実燃費は、確かにカタログ燃費の60%前後と、差は大きいのですが、しかし純粋な燃費数値としてみれば、一般的なガソリン車に対して20〜30%程度の燃費メリットは出るはずです。しっかりと良好な実燃費をマークしているのです。

 ハイブリッドシステムは、カタログ燃費を計測するための走行モードに最適化しやすいため、良好なカタログ燃費を出すことができます。

 走行モードは、きめ細かく加減速が決められていますが、その時にどのようにエネルギーを使うのか、つまりモーターとエンジンの出力をどう配分して加速させるのかを、最適化することができるんですね。カタログ燃費は走行モードが決まっているので、その後どのような走行になるかも決まっていますから、エネルギーマネージメントはそうした先を見越して行うことが可能になります。

 現実の道路では、この先に何が起き、どのように走行状態が変化するかを知ることはもちろん、予測することも不可能です。バッテリー残量が不足気味になり、エンジンで充電する、といったことも起きます。

 通常のガソリン車であれば、エンジン以外の動力はありません。シンプルだからこそ、カタログ燃費に最適化可能な領域が狭くなるわけです。それでカタログ燃費と実燃費の乖離が、相対的に小さくなるわけです。

 一般的にハイブリッドはガソリン車に対して20〜30%程度の燃費メリットがあります。しかしその程度では高価になるハイブリッドの価格差を埋め合わせることが難しいのは、計算してみるとわかります。つまりエコカー減税をフルに活用させる代わりに、クルマ自体の価格でエクストラコストを支払っているのです。

 生産コストは、そこに費やされたエネルギー量に置き換えることができます。つまり高価なクルマは、多くのエネルギーによって作られているから、高くなるのです。

 たとえばレアメタルというのが高価だということは知られていますが、その理由は埋蔵量だけではありません。素材として使える状態に精製するのに、人的なパワーを含めた多くのエネルギーが必要になるからなんです。

 そういう意味では、車両価格+燃料費でハイブリッドがガソリン車よりも高価になってしまうということは、エネルギーをより多く消費していることであり、トータルでエコではないということになります。つまりエコだけを志向するならハイブリッドを選択するべきではない、ということです。

 ハイブリッドシステムのメリットは、エンジンを最大効率の近くだけで運転させることが可能なことです。低回転域ではエンジンの熱効率は半分程度にまで低下してしまいます。発電機を回すのにエンジンを最大効率で運転させ、しかも不必要な時は休止させてしまえば、エンジン側は2倍どころか、3倍以上の燃費メリットを得ることが可能です。

 しかし実際にはバッテリーを充電して放電させるとエネルギーは60%以下に減少してしまい、また重くなる車両重量、ドライバーにとってコントロール性の悪いマネージメントなども含めて、実燃費では最終的に120%〜130%程度の燃費メリットになってしまっているわけです。

 実燃費を上げるために、ハイブリッドカーの多くはエネルギー消費をケチる方向に制御プログラムされています。一番顕著なのは中間加速で、アクセルペダルを踏んでもしばらく全然加速せず、その先で少しずつ加速が始まるモデルが少なくありません。加速を遅らせ、加速度を低くすることで、使用するエネルギー量を減らし、結果的に実燃費は良くなる場合があります。

 こうした手法は、ノーマルのガソリン車にも採用されていますが、その制御幅は小さくなっています。その理由は、モーターを持たないのでドライバーが加速力不足を感じてアクセルペダルを踏み増した時に、エンジンが反応するまでのタイムラグが大きくなってしまうからです。ハイブリッドカーでは、モーターがあるので、エンジンの状況に係わらず、スッとトルクを上乗せすることができるので、制御幅が大きくても上手く誤魔化すことができるわけです。

 高速道路で上り坂になるとアクセルペダルを踏み増しして速度を維持することになります。しかし多くのハイブリッドカーでは加速が遅れたり、加速度が小さくなるので、速度が低下してしまい、それが渋滞を引き起こしてしまっています。ハイブリッドカーのオーナーは、そうした弱点を意識して、高速道路を走ってもらいたいですね。


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