オヤジグルマと呼ぶのはオヤジだけ! じつは若者人気が高いカローラの実情とその理由

ミニバンで育った若者にはカローラセダンがクールに映る

 世の中がクルマへの興味が薄くなったといわれて久しい。そのようななかでも幅広く車名が知られている数少ないクルマがカローラとなる。

 初代モデルは1966年にデビューしているので、すでに52年目に入っているご長寿モデルである。ちなみにカローラより歴史のあるクラウンは初代デビューから63年目に突入している。

 カローラは間もなく派生ハッチバックモデルがデビューするが、ここ数年はアクシオというペットネームのつくセダンと、フィールダーというペットネームのつくステーションワゴンが日本国内ではラインアップされている。代々5ナンバーサイズを堅持してきたカローラシリーズだが、現行モデルから国内販売されているモデルは、ヴィッツ系プラットフォームをベースとした、完全国内専売モデル(香港などごく一部へも輸出されている)となり、グローバルモデルとは完全に異なるものとなっている。

 カローラといえばユーザーの平均年齢が高く、“オヤジクルマ”というイメージが今では先行している。しかし、“昭和”の時代には日本国内でファミリーカーの代表として、トップセラーカーとして君臨し、バブル経済末期の1990年の車名別での年間販売台数で30万8台(月販平均約2万5000台)という最高記録を樹立。この記録は2010年にプリウスに抜かれるまで歴代最高販売台数であった。

 自販連(日本自動車販売協会連合会)の統計によると、2017事業年度(2017年4月~2018年3月)トータルでの販売台数は7万7288台となっている。月販ベースで2000台を超えればヒット車といわれる現代で、月販平均で約6440台を販売しているので、まだまだ“昔とった杵柄”は健在といえよう。

 アクシオとフィールダーの販売構成比はフィールダーが約3分の2を占めているようだ。個人所有だけでなく、現行モデルではハイブリッドモデルがシリーズで初めて設定されたこともあり、法人営業車としてのニーズもしっかりつかんでいるようである。ステーションワゴンのフィールダーでも“貨客兼用”のニーズも目立っている。

 あまりに売れすぎた時代が続いたこともあり、“大衆的すぎる”などとして“クルマ通”を自称するひとたちを中心に“玄人受け”しなかったこともあったようで、バブル経済時代に青春時代を過ごした年代のひとたちをメインに、今でもカローラという車名を聞いただけでネガティブなイメージを持つひとが目立っている。

 筆者は30年間ほどの間、ほぼ一貫してカローラセダンを乗り継いできているが、周囲の人間からはすっかり“変わり者”という目で見られている。「自動車メディアの世界に席を置きながら、カローラを愛車として乗り続けるのはかなり変わっている」というご意見をよく拝聴する。

 ところが、販売現場で話を聞くと、「若年世代ほどカローラにネガティブなイメージを持っていない」というのである。そのような動きに貢献したのがフィールダーだというのである。

 ステーションワゴンモデルに初めて“フィールダー”というペットネームがついたのは、2000年8月に登場した9代目からとなる。“ニューセンチュリーバリュー”というコンセプトを掲げ、プラットフォームなどメカニズムを一新。革新的なエクステリアと上質なインテリアを持ち大ヒットした。

 そしてフィールダーでいえば初代となる、9代目カローラでのフィールダーのCMキャラクターとして、キムタクこと木村拓哉さんが起用された。以降10代目、11代目(デビューからしばらくの間のみ)と、木村拓哉さんはCMキャラクターを務めてきた。当初は「なぜカローラにキムタク?」とか、「カローラのイメージと合わない」といった話も聞かれた。

 しかし、この継続させたCM戦略が功を奏したのか、今ではカローラの過去の偉業(昭和のヒット車)を知らない(興味がない?)若い世代はあくまでカローラフィールダーに限った話となるが、「キムタクがCMしているクルマ」としてスンナリ受け入れられているとのことである。もとから5ナンバーサイズでコンパクトな手軽さも良かったのかもしれない。

 さらにカローラシリーズに若者を呼び寄せたのが、“W/B(ダブル・バイ・ビー)”グレードの登場だ。現行モデルでもともと特別仕様車として設定さてれていたのだが、2015年のマイナーチェンジでカタロググレード化されたエアロパーツが装着されたスポーティ仕様である。フィールダーだけでなく、アクシオにも設定されている。

 メーカーのウエブサイトを見ると、フィールダーで人気ナンバー1グレードとして、“ハイブリッドG W/B”が、そしてアクシオでも“ハイブリッドG W/B”が3位に入るなど人気グレードとなっている。少々大げさになってしまうが、W/Bグレードがカローラシリーズのユーザー層全体を、若返らせようとしている(影響はほんの少しかもしれないが)といっても過言ではないだろう。「今どきカローラにネガティブなイメージを持つほうがオヤジ世代の証拠ですよ」と販売現場では冗談交じりに話してくれた。

 とくにアクシオでは、家庭のクルマがミニバンといった環境で育ってきているケースも多い今どきの若年層には、トランクを持つ3ボックスセダンは珍しく見え、数少ないクルマに興味を持つ若い世代のなかには、“クール(かっこいい)”と思うひとも多いようだ。そのなかで手ごろな価格とサイズで、しかも若い世代が運転してもそれほど違和感のない3ボックスセダンとなるアクシオW/Bは、家族との共用車としても調度良いのかもしれない。

 マイナーチェンジや改良などで、デビュー当初より実用車イメージは薄れてはいるが、現行モデルは原点回帰とばかりに視認性や取り回し性能などの基本性能に重きを置いて開発されたので、お世辞にも基本的には“お洒落”や“スポーティ”なモデルではない。

 ただ2019年登場ともいわれている、次期カローラ・アクシオ&フィールダーは、トヨタ車の最新トレンドを採り入れた、かなりスポーティイメージの強いモデルになるともいわれている。W/Bグレードを中心に、若い世代へもしっかりアピールしている現行モデルは、来年登場予定の次期型カローラ・アクシオ&フィールダーの販売促進活動についての下地作りを着々と行っているようにも見えてしまうのは考えすぎだろうか。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
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乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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