今年のパイクスはVWが優勝! 電気自動車が史上初の総合コースレコード樹立【PPIHC2018】

VWのI.D.Rパイクスピーク、8分13秒どころかまさかの8分切り

 第96回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称:パイクスピーク)が、現地時間の6月24日に開催された。パイクスピークは、その第一回目の開催が1916年という、インディ500に次ぐ長い歴史のあるレース。アメリカ・コロラド州にある標高4302mのパイクスピークを舞台に、誰が一番速く走りきることができるかを競うヒルクライムである。

今年も決勝日の天候は大荒れで、早朝こそ快晴であったものの、午前10時を過ぎると山頂上空には雲がかかり始め、その後は大粒のヒョウと雪が降るというコンディション。そして、朝から強風が吹き荒ぶ厳しい一日となった。

しかし、午前8時の二輪部門から走行は順調に進み、転倒はいくつかあったものの午前9時半には全18台の二輪部門の決勝レースは全て終了した。2輪総合トップは、カーリン・ダン選手(No.5 2018年式Ducati MTS-1260 Pikes Peak/パイクスピーク・ヘビーウエイト・クラス)の9分59秒102であった。

 そして続く四輪部門。注目のフォルクスワーゲンの電気自動車「I.D.Rパイクスピーク」を駈るフランス人ドライバーのロメイン・デュマ選手は、そのトップバッターとして、コースイン。

この電気自動車は、明らかにこれまでとは次元の異なる速さで山を駆け上がり、チェッカーフラッグを受けた。注目のタイムは、2013年にセバスチャン・ローブが「プジョー208T16パイクスピーク」で出した8分13秒878を大きく上回り、史上初の7分台のタイムである7分57秒148という驚異的なものであった。

クルマを降りたデュマ選手は「ターゲットタイムとほぼ同じ」とコメントしていることから、フォルクスワーゲンは8分切りが当初からの目標だったのだろう。もちろん、その後に続く車両でこれに対抗できる車両はなく、フォルクスワーゲンは31年ぶりのパイクスピーク参戦で総合優勝をもぎ取ることに成功。ロメイン・デュマ選手は3年連続で「山の男」の称号を得ることとなった。

レースは、天候の急変もあり、残り13台というところで中断。その最中にも頂上付近は雪が降り積もり、このままレースが続けられないという判断の下、残りの参戦車両については、コースを短縮してのレースということに決定。
終盤の出走順となっていた日本人ドライバーの小林昭雄選手(No. 249 2000年式ポルシェ911 GT3/Time Attack-Time Attack 1クラス)、奴田原文雄選手(No. 230 2018年式 日産リーフ/Time Attack-Time Attack 1クラス)ともに、ボトムセクションと呼ばれる標高の低いハイスピードセクションのみでの競技となった。

 パイクスピーク初参戦の小林選手は「コースが想像以上に危ないし、クルマの出力低下も厳しく、練習ではタイヤが適正温度まで上がらず、と初めてのコースで満足に走れませんでした。決勝の天候の変化についても、これぞパイクスピークなんでしょうが、予選で良いタイム出して早い出走順を得ることが重要だということを理解しました。今回の参戦は自分の実力を出しきれずに不完全燃焼でしたが、レースを終えて帰ってくるときの観客のみなさんの応援は良いものですね。今の気持ちは、また来年も来たいですが……。まず、クルマもドライバーも、レベルアップが必要であり、自分自身、しっかりテーマを持ってスキルアップをしたいと思います」とコメント。

 奴田原選手も「不完全燃焼、のひと言です。が、山の天気ですからなす術もありません。リーフのほうは、バッテリーの温度警告が事前に出たものの、冷却もしっかりできて準備万端だったのですが……。決勝の自分の出走時の路面コンディションは、前半がドライなのですが、後半がウエット&濃霧という状況。ADVAN FLEVAのウエットグリップが本領発揮し、ハイパワー車を相手に2番手のタイムも出せました。このウエットのままで山頂まで行ければ……。今回の参戦を応援してくださった皆さん、サポート企業様、チームスタッフ皆さん、ありがとうございました!」と語っててくれた。

また、今回唯一の日本人ライダーとなった井上哲悟選手は、当初の予定からの予定からスリックタイヤへの変更。さらに燃料の変更と現地での練習走行の度に大幅なセット変更を施し、タイムアップを重ねてきたものの決勝レースではその変更が若干裏目に出てしまい苦戦。ミドルセクションで転倒を喫し、11分34秒021のタイムでパイクスピーク初挑戦を終えている。


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