航続距離を伸ばして「EVの一般化」を目指した新型リーフは成功したのか

5月の販売台数ではアクセラやシビックを上まわっている

中国では国策的に普及が促進されている電気自動車。北米ではテスラが新興ブランドらしからぬ高いブランド力を手に入れています。欧州、とくにドイツでも電動化の流れは勢いを増すばかりで、電気自動車にはグローバルに追い風が吹いている昨今です。

日本市場においては、電気自動車というと“ほぼ”日産リーフといった状況ですが、そのリーフは2017年のフルモデルチェンジ以降、販売は好調に推移しています。新車効果もひと段落したといえる2018年5月のセールスは前年比260.3%となる1765台(自販連調べ)。EV化

台数的にはランキング34位と目立つほどではありませんが、同月でいうとホンダ・シビック(1632台)やマツダ・アクセラ(1203台)よりも多いという事実は、Cセグメントのモデルとして確固たる地位を築いているといえるのではないでしょうか。

日産リーフの進化は航続距離の伸長にあります。初代のデビュー時には200km(JC08モード)の航続可能距離とされていましたが、マイナーチェンジごとにパワートレインの改良やバッテリー総電力量の増量を行うことで、最終的にはバッテリー総電力量30kWh、航続可能距離280km(JC08モード)を実現していました。そして、フルモデルチェンジによりバッテリー総電力量は40kWh、航続可能距離は400km(JC08モード)へと伸びたのです。

実際には空調を使ったりするため航続可能距離はカタログ値より短くなりますが、カタログ値の7割だとしても280kmも走れるわけです。通常のサンデードライブであれば十分な能力だと判断するドライバーが増えたことも不思議ではありません。出先で充電が足りなくなっても、充電インフラの整備が進んだことで不安を覚えるケースも減っています。

さらに日産の『旅ホーダイ。』というキャンペーンでも知られているように、日産ゼロ・エミッションサポートプログラム2の使いホーダイプランに加入すると、月額2000円で全国5700カ所以上の急速充電器が使い放題になります。原油価格の上昇に伴い燃料費が上がっている中で、クルマにかかる経費が抑えられるというのは大きな魅力となっています。

また、プリクラッシュセーフティと運転支援システムを統合した「プロパイロット」、ボタンひとつで枠内に駐車ができる「プロパイロットパーキング」、そして電動車両ならではのワンペダルドライブをレベルアップした「e-Pedal」といった先進的な装備もリーフにゼロエミッションであること以上の魅力を加えています。

自動車という商品の成否については、メーカーの目論見通りに売れたかどうかが基準であって、絶対的な台数で評価するのはミスリードになる部分もありますが、Cセグメントとして見ると、ダウンサイジングターボやクリーンディーゼルを積むライバルを上まわっているという事実は、規模感としては十分に成功したと評価していいのではないでしょうか。

リーフがフルモデルチェンジによって売り上げを伸ばしたことは、電気自動車がキワモノでなくなり、普及フェイズがひとつ上のレベルに進んだことを示しています。この先の求められるのはガチンコとなる同クラスのライバルが出現すること。そうして電気自動車が選べる製品となれば、市場規模はいっそう拡大することでしょう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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