「クルマとしていいものを作ろう」開発責任者が新型日産リーフで示すEVの「当たり前化」

航続可能距離の向上はもちろん、クルマそのものの質感を高めた

2010年に登場した初代リーフは、世界各国で28万台が販売された。これはエコカーとしてはもちろん、自動車としての高い操縦性能や快適性が評価された結果と言えるだろう。2代目となる新型リーフのコンセプトを、商品企画およびマーケティング担当者に聞いた。

谷内陽子さん(以下、谷内さん):初代リーフは最初からEV(電気自動車)としてスタートしています。ただ、当時はそもそも量産車としてのEVとはどんなクルマであるべきなのか? 電気で走るのは当然として、そのほかに何が必要なのか? 次世代の自動車としての期待感はあるものの、当時の社会的な認知で言えば、アレルギーのようなものもありました。

EVがガソリンを使わないエコカーであるということは周知されていても、では自動車としてどうなのか? 走行性能や快適性、実用性について言えばマイナスイメージもあった。充電スタンドなどインフラ整備の課題もある。

谷内さん:EVとしての機能・性能とともに、とにかく「クルマとしていいものを作ろう」と思いました。多くの人に乗ってもらえるような、そういうEVを作ろうと。新型リーフのエクステリアデザインは、ほかの日産車と同様に乗用車としてどう機能するか? に重点を置き、さらにEVらしさや未来的な要素を加えて行きました。あらゆる技術を投入し「いちばんカッコいい、いちばん快適なクルマ」を目指しました。

新型リーフは初代リーフに比べて、さらに乗用車らしくなった。Cセグメントのハッチバックモデルという競合車が多いクラスにあって、独自の存在感を示している。

寺西 章さん(以下、寺西さん):EVを一般化し、普及させることも2代目の目標のひとつです。日常で普通に使えるクルマとして、そうしたニーズに応えること。そのためには初代で受け入れられなかったところを改善し、そのうえで快適性や運転の楽しさを高めたクルマとして、リーフならではの魅力を伝えたいのです。

谷内さん:このクラス(Cセグメント)の車種は「今の時代のど真ん中」のモデルと言えます。競合車の多いクラスですが、サイズだけでなく価格帯としても、走行性能や居住性、快適性、経済性などが高次元で要求されます。ということは、逆に言えば、このクラスのクルマをEVでしっかりと作ったならば、EVのスタンダードになります。ただ、そのためにはいくつか課題もありました。

 とくに航続距離については、なんとしても性能向上をさせないといけませんでした。ここ数年で充電スタンドのインフラ整備が進んだこともあり、充電の機会自体は増えていますが、ユーザーの方の使用環境や走行パターンなどを調査してみると、やはりもう少し航続距離を延ばしたいと。そこで、400kmは必要ではないかということで、バッテリーサイズを従来車とほぼ同じまま、新型では容量を拡大しました。これにより、多くのユーザーにとって「毎日充電しなくてもいい」というレベルになったと考えています。

北原寛樹さん(以下、北原さん):自動車としての走行性能や快適性という部分については、初代に比べて静粛性を高めています。モーターで走るEVでは、エンジン車とは異なる振動や騒音が発生します。モータートルクが大きいためにボディへの振動の伝わり方が違うことや、モーター音が静かなので、エンジン車では聞こえないノイズが耳に届くということもその原因のひとつですが、そうしたEVならではの特性に合わせて防振性や遮音性を高めています。

世界中で販売された初代リーフから得られた知見をもとに、EVならではの課題をクリア。新型リーフは乗用車としても進化し、そして存在感を高めた。

寺西さん:EVが普通のクルマとして認知されるようになっても、リーフはそのなかでも独自性を持った「エッジの効いた」モデルでありたいですね。EVだから何かを犠牲にするのではなく、EVだからこそ乗用車としての満足感を高めることができるクルマを目指しました。日産が掲げる「インテリジェントモビリティ」の象徴であり、最高峰モデルという位置付けです。

谷内さん:リーフに乗ると、カーライフが大きく変わるかもしれません。モーター駆動ならではの力強い走りや低重心設計による高い走行性能、さらにはアクセルペダルだけで走れるe-PedalなどEVらしい走りを楽しむことができます。さらに充電環境によって通勤やレジャーのルートも変わるので、新たな発見や出会いがあるかもしれません。翌日の予定に合わせて深夜にガソリンスタンドに行くことなく自宅で充電できたり、エンジンのように暖機の必要もなく、冷暖房やシートヒーターも予約設定ができるなど、EVのメリットは数多くあります。リーフでEVならではのカーライフを楽しんでください。

リーフはただのクルマではない。「EVを楽しむために生まれたEV」と言えるだろう。


新着情報