酷暑で入れ食い状態も! ワンメーター客が嫌われない今どきタクシー事情

ワンメーターはOKだが「近距離でスミマセン」は余計なひと言?

 “ワンメーター”、おそらくタクシー業界用語のなかで、もっとも広く一般に知られているものになるだろう。ワンメーターこと“初乗り運賃”は、東京都特別区(23区)三鷹、武蔵野市地域の場合は、現在は1.052kmまで多くのタクシーは410円となっており、この1.052kmまではメーターが上がらないことからワンメーターと呼ばれている。この初乗り運賃は地域によって、走行距離や運賃設定が異なり、これが例えば埼玉県さいたま市になると、2kmまで730円となる。

 東京都は2017年1月30日から現在の初乗り運賃となっているが、それまで2kmまで多くのタクシーが730円となっていた。短距離利用の促進を進めるなどとして現行初乗り運賃にしたわけだが、中長距離利用では逆に運賃が事実上アップしてしまった。

 410円になるときは、はっきりいってどのような変化が起きるのか想像できなかった。しかし新しい初乗り運賃がスタートすると、たとえば朝の通勤時間帯でも駅から最寄り(ワンメーター以内)のオフィスビルまでといった、それまではあまりなかった利用が増え、ターミナル駅のタクシー乗り場で、タクシーの客待ちが減少傾向になったとのことである。

 ただし、日本経済は実感があろうとなかろうと、好景気が続いているのは確かなものであり、それが堅調なタクシー利用を後押ししているという点もあるが、初乗り410円は確実に効果を発揮しているのもまた確かな話となるだろう。

 タクシー乗務員個々がワンメーター利用についてどう思っているのかは千差万別。長距離利用客の見込めるターミナル駅や、空港などで長い時間待って、長距離利用客を当てようという商売スタイルならば、そこでワンメーター客を乗せればたちまち憮然とした態度を取られるかもしれない。

 逆に各駅停車しか停まらない郊外の駅で客待ちをして、駅からワンメーターの距離にある工業団地まで、1日何度も往復してコツコツ営収(営業収入)積み上げていくといったスタイルの乗務員ならば、ワンメーターの利用でもなんとも思わないはずである。ロング(長距離利用)のお客もうれしいが、たとえ近距離利用でも、お客を降ろした場所から、そのまま次のお客が乗り込んで次の目的地へ向かう、つまり効率的な“つながりの良い営業”ができたときも、乗務員としては気持ちが良いと聞いたことがある。

 “かつて経験したことがない”といわれる酷暑に見舞われたときに、乗り合わせた乗務員さんに聞くと、朝の通勤時間帯から汗だくになるのを嫌ったサラリーマンの勤務先最寄り駅からのワンメーターかそれに近い利用が多発し、“入れ食い”状態になったとのことであった。こうなればもはや“ワンメーター大歓迎”という気分になるのかもしれない。

 いま大手タクシー会社を中心に、スマホのアプリでの配車サービス導入に熱心である。いち早く導入した某大手タクシー会社では、スマホでの配車といままでの無線配車も加わり、かなり乗務員は多忙を極め、年収1000万円のドライバーも珍しくないとのこと。こうなると、アプリや無線で配車される合間に、たまたま空車の時に手を挙げられたというケースでは、ワンメーターだからと不満を持つこともまずないだろう。

 ただ、やはりロング客の出やすい深夜のゴールデンタイム(割増料金適用時間)などでは、態度に出さないとしてもワンメーターの利用は乗務員にとっては“出鼻をくじかれる”といった気分にはなってしまうかもしれない。

 ただ筆者が聞いたところでは、ワンメーター利用を見込んで、タクシーに乗り込んだときにあえて「短い距離ですいません」などということは言わない方がいいらしい。ワンメーター利用は仕方ないとしても、このような言葉でカチンとくる乗務員は多いようである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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