規制時代に280馬力を達成した「スポーツモデル」以外の型破りなクルマ3選

当時は「280馬力」という特別な意味がある数字

 日本の制度で、いかにも日本らしく、そして情けないものに、「自主規制」というものがある。2004年まで、国産車にはパワーの上限を280馬力までにするという「280馬力自主規制」というのがあった……(軽自動車の64馬力規制は続いている)。

 そのきっかけは、日産のフェアレディZ32が、280馬力となり、次にスカイラインR32GT-Rを300馬力にしようとしていたのを運輸省(当時)が快く思わなかったため。そんな事情で、1989年から2004年まで280馬力規制があったのだが、その頃、国産車の上限だった280馬力に挑んだ意外なクルマを紹介しよう。

1)三菱パジェロエボリューション

 1997年登場の三菱の人気SUV、パジェロのメーカー・チューニングバージョン。当時三菱は、パリ・ダカールラリーに積極的に参戦していて、その市販車改造クラス&無改造車クラスを制するためのベース車として、パジェロエボリューションを製造・販売。280馬力のスポーツカーエンジンは3.5リッター6G74型V6エンジンに、可変バルブMIVECをプラスした280馬力仕様! パリ・ダカでは、1998年に総合優勝を果たしている。MT車で370万円という破格のプライスで、買っておけばよかったと悔やんだ人も……。

2)ユーノス・コスモ

 1990年に登場したマツダのラグジュアリークーペ。唯一の3ローターのロータリーエンジン「20B-REW」は、レシプロのV12気筒がライバルというとんでもない存在。当初は333馬力で設計され、280馬力規制でディチューンされたといわれるエンジンは、国産初のシーケンシャルツインターボで、このとんでもないエンジンに耐えられるクラッチシステムがなく、AT車オンリーになったという伝説があるほど。

 FRでATで大パワー。暴力的加速とはこのクルマのためにあったような言葉で、発進時のホイールスピンは大得意。当然(?)燃費も暴力的で、カタログ燃費も6.1km/L! 実走では1~4km /Lと大排気のアメ車のV8にも引けを取らない記録を持っている。

 フロアトンネルに熱がこもりやすく、排気警告灯がよく点灯したのも、当時の思い出……。ちなみにGPSのカーナビを世界で初めて採用したのも、ユーノス・コスモ。いろいろな意味で贅沢なクルマだった。

3)三菱レグナム

 大ヒットしたスバルのレガシィに対抗して作った三菱のワゴン。ベースはギャランで、VR4-には、V型6気筒ターボの6A13型=280馬力が搭載された。ハイパワーエンジンを積んで、4WDにすれば、スポーツカーも顔負けのワゴンの出来上がり。これで大ヒット間違いなし、と当時の関係者は思ったのではないだろうか?

 ちなみにVR-4には、専用のエアロやラリーアートのマフラー、さらにMOMOの本革巻ステアリング、RECARO製バケットシート等を追加したスーパーVR-4が限定800台で販売された。このレグナム、じつは1996年の日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞している……。

その他

 トヨタでは70スープラや80スープラ、ソアラ、アリスト、マークⅡ、チェイサーなどが280馬力車をラインアップしたいた。日産は、フェアレディZとスカイラインGT-R、ステージアの3車種。ホンダはNSXがNAエンジンで280馬力(!)。スバルはレガシィとインプレッサが280馬力だったし、マツダはRX-7(FD3S)が255馬力からスタートし、6型から280馬力になった。あの頃、メーカーもユーザーも「280馬力」は特別な意味がある数字だった。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

愛車
日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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