インドネシアタクシー戦線異状アリ!? 続々ミニバンタイプが導入される背景とは

配車アプリサービスの普及と共にMPV人気が上昇

 筆者が初めてインドネシアの首都ジャカルタで開催されるモーターショーの取材に行ったのは2015年。その当時はインドネシアのタクシー会社最大手“ブルーバード”のタクシー車両はほぼすべてコンパクトセダンの“トヨタ・ヴィオス”ベースのタクシー専用車両“トヨタ・リモ”であった。

 ブルーバード以外でもほぼすべてリモと言ってもいい状態であった。そして翌年再びジャカルタを訪れ、スカルノハッタ国際空港に降り立つと、ブルーバードではないタクシー会社でシボレーや韓国起亜自動車、はたまた中国吉利汽車などのタクシー車両を見かけるようになった。

 しばらくはリモ以外のタクシー車両でも“セダン”という部分では共通だったのだが、昨年あたりからブルーバードの車両に、ホンダの新興国向けMPV(多目的車)であるモビリオが目立ち始めた。

 筆者のようなツーリストでは旅行用スーツケースなどもあり、コンパクトセダンのトランクでは、1名乗車でも荷物が収まりきらないこともあったので、その点ではモビリオタクシーは空港からの利用では便利であった。インドネシア

 そして今年スカルノハッタ国際空港に降り立つと、ブルーバードのタクシー車両で、“インドネシアの国民車”とも呼ばれるほどよく売れているトヨタの小型MPV“アバンザ”ベースのタクシー専用車“トランスムーバー”がたくさん走っていた。トランスムーバー自体は2016年末にデビューしているのだが、ここへきて最大手のブルーバードでの車両採用が始まったようなのである。

 さらにトピックスなのが、業界2位とされる“イーグルタクシー”では、インドネシアでは“ウーリン”ブランドで現地生産され販売されている小型MPVとなる上海通用五菱汽車の“コンフェロ”が、タクシー車両として採用されたのである。

 新車販売台数における日系ブランド車の占有率は98%にものぼっていることもあり、上海通用五菱汽車としては、いきなり個人使用で日系ブランド車と販売で競い合うのはかなり体力を消耗してしまう。韓国ヒュンダイグループと同じように、まずはタクシー車両としてのフリートセールスに注力して、ブランドの認知度アップと販売台数の積み増しをしようということなのかもしれない。

 ただジャカルタ市内を走る連節式のBRTバスで、中国製バスを使っていたらあっという間にヤレヤレになって、スカニア製連節バスなどに切り替えたといったこともあるので、地元消費者の中国製品に対する評価が一長一短でアップすることもないので、ウーリンの進む道はけっして平坦なものではないともいえよう。

 モビリオやトランスムーバー、そしてコンフェロと、インドネシアのタクシー車両のMPV化が進んでいる背景には、インドネシアでも普及しているアプリによる配車サービスの普及があるようだ。

 インドネシアではセダンタイプのモデルは税金が高くなるので、ハッチバックもしくはMPVを個人所有するケースが圧倒的に多い。つまりアプリによる配車サービスのクルマはMPVやハッチバックが多いので、積載性能ではセダン型タクシーより便利ということになる。またMPVなら多人数乗車も可能となる。配車アプリの普及が進むなかで、タクシーのMPV化が進んでいるようである。

 セダン型タクシーが乗りたければ、ブルーバードグループの“黒タク”となる“シルバーバード”があるので、多少ぜいたくにはなるが(車両はベンツEクラス)、TPOで使い分けすることも可能である。

 毎年状況の変化が見られるジャカルタのタクシー事情。来年はどうなっているかが(中国車は元気に走っているか)、いまから楽しみである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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2019年式トヨタ・カローラ セダン S
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乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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