【試乗】3代目に進化した上質な大人の4ドアクーペ「メルセデス・ベンツCLS」に試乗!

スムース感のある上質な走りを披露する

 2004年にデビューし、高級4ドアクーペという新しいカテゴリーを創出したのがメルセデスベンツのCLSだ。EクラスをベースにSクラスに匹敵する車格感、そして存在感を持たせつつ、押し出し感を抑えエレガンスを極めた流麗なスタイリングを与えた4ドアの4座クーペだ。以来、各自動車メーカーから同種の4ドアクーペが登場したことは周知の通り。メルセデス・ベンツCLS

 そのCLSが約7年ぶりにフルモデルチェンジし、3代目となった。CLSはデザイン命のクルマでもあるわけだが、新型は今後のメルセデスベンツデザインのベースになるデザイン語法を初採用。サメの鼻先を思わせる逆スラントしたシャークノーズこそ精悍(せいかん)さをUPさせているものの、ボディサイドを走るキャラクターラインはエッジ感を押さえ、なだらかなラインで構成されているのが大きな特徴だ。

メルセデス・ベンツCLS

 おかげでCLSならではの華やかさや流麗さに加え、ほんの少しやわらかさとやさしさが加わったスタイリングに見える。新型CLSのパーユニットは2種類。CLS450 4MATICに搭載されるのが“復活した”直列6気筒ターボ、367馬力、500N・mだ(トランスミッションは9速AT)。これは16kW、250N・mのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と48V電気システムの新技術を組み合わせたもので、エンジンが低回転時のアシストを担うほか、エンジン始動時の振動低減、アイドリングストップからの再スタート時の快適性などが高まるそう。メルセデス・ベンツCLS

 もうひとつのグレードがCLS220dスポーツ。こちらはEクラスでもおなじみの2L 直4、194馬力、400N・mのクリーンディーゼルエンジンと9速ATを組み合わせる。JC08モード燃費は18.6km/L。

 まず試乗したのはCLS450 4MATICだ。運転席に着座すれば、内装全体の仕立ての良さ、エレガンス、12・3インチ×2のディスプレーが並ぶメーター&ナビ・インフォメーション画面の先進感、Sクラスと同じステアリングホイールの握り心地の良さに感心させられるとともに、背中、腰、お尻、太股裏に見事にフィットするシートのかけ心地の良さに感動である。メルセデス・ベンツCLS

 試乗のスタートは地下駐車場だったのだが、新型CLSの特徴的装備、ハイライトのひとつと言えるのがイルミネーテッドエアアウトレット=タービンエンジンをイメージしたデザインのエアコン吹き出し口。なんと64種類ものイルミネーションが内側に仕込まれていて、ムード満点。夜の大人のデートカーとして、最強の演出ではないか(色の選択にもよるが)。メルセデス・ベンツCLS

 そうそう、重要なことを忘れていた。新型CLSはこれまでの4人乗りから後席3人掛けOKの5人乗りになっているのも大きな進化点。実際、両側に美女を従えて3人掛けしてみたが、少なくとも身長172cmのボクが中央席に座っても、足もとの大きなトンネルの出っ張り部分に足をはさむ必要はあるものの、頭上、ひざまわり方向のスペースは十二分。意外なほど狭さを感じなかった。メルセデス・ベンツCLS

 では、まずはCLS450 4MATICをスタートさせてみよう。そのスペック、ISGの威力によって出足からの加速力はウルトラスムースかつトルキーで素晴らしく静か。19インチタイヤを履くにもかかわらず、乗り心地は滑らかさを極め、段差を乗り越えたときのショック、音、振動は微小。メルセデス・ベンツCLS

 しかも、うねり路での足まわり、ボディの動きが秀逸。ふわ~と浮き上がり、ひゅっと下がる挙動とは無縁。スッと路面をなめるようなしなやかで安定した動きに終始。車酔いの原因のひとつがうねり路面での内臓の上下動といわれているが、CLSは車酔いのしにくいクルマと言えそうだ。

 CLSのボディサイズは全長5000mm×全幅1895mm×全高1425mm、ホイールベース2940mmと大きめだが、市街地を走ってそれほど大きさを感じさせないのは、ステアリングの効きがよく、クルマを自在に操れるような感覚があることと、メルセデスベンツ伝統の小回り性の良さ=4WDでも最小回転半径5・5mの小回り性の良さによるものだろう(FRの220dは5.4m)。メルセデス・ベンツCLS

 動力性能はジェントルに強力……というCLSにふさわしいエレガントな高性能が持ち味。その直6ならではのスムースさ極まる回転フィールは、ターボにして、まるで大排気量NAエンジンのようでもある。高速クルージングはフラットでマイルドな乗り心地、静粛性ともに高級感、快適感に溢れるもの。最新のS/Eクラス同様の先進安全支援機能によって、絶大なる安心感に包まれたドライブが堪能できた。メルセデス・ベンツCLS

 シーンが箱根ターンパイクのような急こう配が連続する山道に移っても、CLSはその実力をいかんなく発揮する。小田原側の料金所からの上り坂はクルマにとっても心臓破りのこう配だが、それをそうと感じさせないほどのトルク、パワーで、エンジンを高回転まで回さずとも9速ATの恩恵もあってグイグイ、静かに、スムースに登っていく。メルセデス・ベンツCLSさすが、367馬力、500N・mであり、その様もまたエレガント。4MATIC=4WDゆえ、安定感も抜群。ひらりひらりとコーナーをなめていく感覚であり、山道が苦手なドライバーでも安心感たっぷりに、ストレスフリーで運転することができるだろう。

 エンジンを味わい尽くすため、アクセルペダルを深く踏み込めば、直6らしい伸びやかでパワフルな加速感 高回転での快音が、9速ATの気持ちいいステップアップ感とともにもたらされる。この場面では、低全高・低重心を生かしたスポーツクーペそのものの突き抜けた走りの快感、興奮を味わえる。メルセデス・ベンツCLS

後輪駆動の走りはじつに軽快!

 一方、FRのCLS220dスポーツは、4WDの450 4MATICと乗り比べた場合、同じ19インチタイヤを履いていても、乗り味は450 4MATICの「重厚・しっとり」に対してすこぶる「軽快」。高級感やエンジンを回したときの快感度こそ薄れるものの、例えば、防寒性は変わらなくても、重いメルトンのコートから軽量なダウンコートに着替えたぐらいの違いがある。メルセデス・ベンツCLS

 220dで気になる点といえば、クリーンディーゼルエンジンの車外騒音の大きさ。箱根の山奥の静かな環境だったからかもしれないが、けっこうガラガラうるさい。が、それを帳消しにしてくれそうなのが実燃費性能だった。

 東京・品川から首都高速、東名高速、箱根ターンパイク、山道が連続する一般道を経由し、箱根強羅まで走り、同様のルートで、帰路、渋滞区間を通過し、東京・品川に戻ってきたときの実燃費はCLS450 4MATICが約10km/Lに対して、CLS220dはJC08モード燃費に迫る、約15km/Lを記録(高負荷な山道走行の比率も多い)。全長5m、車重1850kg近い車重なのだから、これは立派。メルセデス・ベンツCLS

 燃料タンク容量は66Lだから、450 4MATICなら約660キロ、220dスポーツなら約810キロ近くの航続可能距離ということになる。個人的なお薦めは450 4MATIC。1000万円を超えてしまうが、CLSらしいエレガンスささえある性能、乗り味が得られるところが決め手。

 ちなみにボディカラーはホワイト系やレッドのような明るい色が似合いそう。濃いカラーだといきなり地味である。また、内装色はブラック、ベージュ、レッドが選択可能だが、ベージュまたはレッドが明るく、華やかで、大人のデートカーとしてこれ以上ないセクシーさを備えていると思える。メルセデス・ベンツCLS

 最後に先進安全支援機能について触れたい。ACCはもう完璧である。再加速時にもたつくACCも多い中で、CLSの場合、料金所からの再加速性能も不満なく、またステアリングアシスト付きのレーンキープ性能も秀逸。とくに渋滞時、30km/h以下ならステアリングから手を離しても設定が解除されず、高速道路で停止したあとも、30秒以内なら(一般道は3秒以内)自動で再発進してくれるのだから、帰路に経験した東名高速、首都高の大渋滞も快適だった。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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