認定中古車が新車並の価格? 複雑化するディーラー系中古車の現状

登録済み未使用の認定中古車が出ることも……

 最近は日系、輸入車系だけでなく、中古車情報検索サイトなどでも“認定中古車”の設定を積極化している。もともと、下取り車のなかなどから、独自の基準をパスした良質な車両について、独自の保証をつけた中古車のことを指していた。

 たとえばトヨタの“T-Value”として認められた中古車は、“まるごとクリーニング”、“車両検査証明書”、“ロングラン保証”という3つの安心が付帯されている。ロングラン保証とは、納車日から1年を保証期間とし、エンジン・トランスミッションなど、そしてボデー内外装部品(塗装・サビを含む)、消耗部品および油脂類を除く全部品が保証部位となるもの。

 現場のセールスマンに聞いてみると、「ハイブリッド車は中古車で買ったほうがお得感が高いともいえますよ」と教えてくれた。ハイブリッド車を数多くラインアップするトヨタでは、“T-Valueハイブリッド”という認定制度を設けている。これはT-Valueに加え、さらに累計走行距離が20万kmまでで、初度登録年月から10年目まで、もしくは3年間のいずれか長いほうを保証期間とし、メインバッテリー、ハイブリッドトランスアクスル、ハイブリッドコントロールコンピューター、バッテリーコンピューター、スタータージェネレーター、インバーター、DC-DCコンバーター、冷却装置が保証対象部位となるもの。さらに“ハイブリッドシステム診断書”の発行もしてもらえる。

 一般的なガソリンエンジン車に比べると、ハイブリッド車は走行距離が少なめだからコンディションが良いとは必ずしも言えないし、下取り査定時のコンディションの判断は難しいと販売現場でもよく聞く話。そのようななかで、ハイブリッド車の中古車への不安を払拭しようと、新車購入のケースよりもある意味保証内容を充実させているのである。

 ただ、ここ最近は認定中古車といってもその内容はだいぶ変化を見せてきているともいえるのである。もともと認定中古車の設定に積極的であったのは輸入車であった。一昔前の輸入車といえば、日本車に比べ、消費者イメージとして「故障が目立つ」といったものが強くあり、それを払拭するために程度の良い下取り車などに独自保証をつけ、消費者へ安心感をアピールしていた。いまより為替の関係などもあり、日本車との価格差に開き(輸入車のほうが高い)があったこともあり、輸入車を中古車で買うというニーズが目立っていたのである。

 しかし最近、メーカーによって程度の差はあるが、未登録の新車在庫車について、ディーラー名義で自社登録を行い、試乗車や点検などへ出した時の代車として短期間使ったあとに、認定中古車として自社の中古車展示場に並べられるケースが目立ってきている。

 さらには、未使用・未登録状態の中古車を自社登録し、そのまま登録済み未使用の状態で認定中古車として展示してしまうケースも珍しくなくなってきた。

 最近では中古車センターを併設しない日系ディーラーでも数台となるが“中古車”を展示していることが目立つ。下取りしたなかで上玉の車両を中古車として展示するケースもあるが、試乗車などとして自社登録した車両を半年など短期間使用して中古車として再販するケースも目立ってきている。

 現場で話を聞くと、「ディーラーが試乗車に使うなどして自社登録を目的としてメーカーから仕入れる時には、一般小売用よりもかなり安く仕入れることが可能です。しかしそのまま自社登録して試乗などで使用したあと中古車として再販する時の値付けは一般販売用の正規のメーカー希望小売価格ベースとなるので、新車を売るよりはるかに儲かる」とのこと。短期間での再販を目的とし、走行距離が伸びないようにし、車内禁煙は当然で、お客との商談時の試乗以外での使用を固く禁じるなど、試乗車の管理はかなり厳しいものとなっているとも聞いている。

 つまり、新車ディーラーが、新車や一般的な中古車のほかの、“第三の販売方法”として認定中古車を活用しているといってもいい状況となっている。

 ここまでみると、認定中古車は結構買い得感の高い存在のように思えるが、事実新車購入を前提に商談を進めているなかで、どうしても予算的に購入条件が追い付かない場合に、試乗車などで短期間使用した認定中古車をすすめると、スンナリ契約につながることが多いとのことである。「なんとしてもライバルディーラーにお客をとられたくない」、そんな気持ちのディーラーのための防波堤となっているのがいまどきの認定中古車ともいえるのだ。

 一般的には「新車で買うよりは買い得感が高い」というのが、いまどき目立つ“新品同様”の認定中古車の特徴。ただ、気を付けてもらいたいのが、とくに輸入車で目立つ人気の高いモデルでのケース。たとえばいまは、新型への切り替え時となっているジープラングラーだが、ここ数年は人気がかなり高い状態が続いていた。そのため、よほど人気の低いボディカラーなど以外の仕様は、新車としての販売でバンバン売れていた。

 つまり、もともと新車としてディーラー在庫になることがほとんどなく、右から左へ売れているので、認定か否かに関係なく、程度の良い高年式の中古車などはほとんど流通していないが、中古車を希望しているひとも結構多いので、わずかに流通する中古車の販売価格が新車販売価格とほとんど大差がないといったことが発生していた。

 ブランド自体人気の高いBMWミニでも、結果的に高年式認定中古車自体は設定されるのだが、過剰にオプションを装着しているなどして在庫になっていたりしたものも多いので、新車で購入した場合と比べて大差がないかかえって割高感が目立つとのことで、販売現場ではあまり勧められないとのことである。もちろん、一般的には初度登録から数年以上経過した認定中古車は減価償却も進むので、それなりに価格がこなれてくるのだが、それでも車種や年式によっては、新車で大幅値引きにより購入したほうが割安イメージは強いケースもあるようだ。

 いまは今年の夏に相次いで発生した自然災害により、程度の差はあるだろうが、どのディーラーも一時的に抱える在庫が少ない状況となっているようだ。だが、そのような特殊な事情が発生しない限りは、日本車、輸入車を問わずに過剰気味に在庫を抱える傾向が続いている。

 そのなかで自社登録を積極的に行い、短期間で認定中古車として再販したり、ダイレクトに自社登録車両をそのまま認定中古車として販売するケースが目立っているが、これは日本に限った話ではなく、アメリカでもPre Owned Vehicle(いまはUsed Carとは呼ばない)と呼び、特別保証を付帯して積極的に販売している状況は同じである。

 一部認定中古車と登録済み未使用中古車の垣根がなくなりつつある現状を考えると、認定中古車とは異なる新たなカテゴリーを設けるなど、中古車をさらに細分化して販売していかないと、購入を希望する消費者を混乱させてしまうのではないかともいえるのが、いまの中古車の世界ともいえるだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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