2番手で何が悪い! トップになれないけど魅力溢れる愛すべきクルマ5選 (2/2ページ)

兄弟を合わせると驚異的な販売台数になるモデルも

■ミニバン:トヨタ・ヴォクシー(販売1位:日産セレナ)

 日産セレナは2018年(暦年)に9万9865台を登録して、ミニバンの販売1位になった。トヨタ・ヴォクシーは9万759台で、ミドルサイズミニバンでは2位だが、姉妹車のトヨタ・ノアとトヨタ・エスクァイアを加えると18万7722台に達する。小型/普通車で1位の日産ノート(13万6324台)、総合2位のスズキ・スペーシア(15万2104台)を軽く上まわる。3姉妹車を合計すると物凄い人気車だ。

 現行トヨタ・ヴォクシーは床を低く抑え、日産セレナに比べると乗降性が良く、低重心になって走行安定性も優れている。内装は上質で、3列目シートは床と座面の間隔を十分に確保したから多人数乗車時の居住性も日産セレナと同等に快適だ。3列目はレバー操作だけで跳ね上げるから、荷室を広げる時の使い勝手も良い。発売から5年を経過して、運転支援機能などは備わらないが、ミニバンとしての快適性や実用性は優れている。価格の割安感でも日産セレナに負けていない。

■SUV:ホンダ・ヴェゼル(販売1位:トヨタC-HR)

 野性的なカッコ良さとワゴンの実用性を併せ持つSUVは、人気のカテゴリーになったが、トヨタは商品開発で遅れを取った。2013年にハリアーを発売して人気を得たが、価格が高く後が続かない。2016年末にようやく発売されたのがコンパクトなトヨタC-HRで、全店が扱うから売れ行きを伸ばした。

 しかし商品力は2位のホンダ・ヴェゼルが上まわる。燃料タンクを前席の下に搭載して空間効率が優れ、後席の居住性はトヨタC-HRよりも大幅に快適だ。荷室も広くシートアレンジも多彩になる。視界が良いから運転もしやすい。1.5リッターノーマルエンジンを用意して、価格もホンダ・ヴェゼルが割安だ。トヨタC-HRに比べて実用性が高く、メリットも多い。

  

■セダン:トヨタ・クラウン(販売1位:トヨタ・カローラアクシオ)

 日本に適したセダンの最多販売車種といえば、5ナンバーサイズを守ってきたトヨタ・カローラアクシオだが、今はモデル末期だ。安全装備や内装の作り、乗り心地に古さを感じる。しかも次期型はトヨタ・カローラスポーツと基本部分を共通化する3ナンバー車になる。日本の開発者が日本のユーザーのために作り上げたカローラは、現行型で終わりを告げるのだ。

 一方、セダンで2番手のトヨタ・クラウンも、現行型は外観を大幅に変えて伝統のロイヤルサルーンを廃止した。走行安定性は高まったが、走りの印象はメルセデス・ベンツに近づき、日本の使用環境と走行速度に適した柔軟で快適な乗り心地は失われた。

 もはや国産セダンの終焉を感じるが(トヨタ以外のセダンはとっくに終わっている)、強いて挙げれば、次期トヨタ・カローラセダンよりは現行トヨタ・クラウンのほうが歴代ユーザーに馴染みやすい。

 それにしてもトヨタは、改めて5ナンバーサイズのトヨタ・カローラセダンを開発すべきだ。トヨタ・クラウンも「日本の高級車」をテーマに、商品開発を再検討したい。トヨタ・クラウンには、トヨタ・センチュリーのエッセンスを盛り込み、この2車種を連係させて日本の高級セダンを改めて問い直すと良いだろう。国産セダンを救えるのは、もはやトヨタだけだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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