新車なのに測ったらパワーが出てない? カタログ値と実測値でエンジン馬力が異なるワケ (1/2ページ)

測定方法の違いから数値が異なってしまう

 いまや新車のカタログを見るときには、燃費の項目を気にしているというユーザーが多数派かもしれないが、やはり諸元表の華といえば、最高出力(馬力)や最大トルクというドライバーもまだまだ多いことだろう。しかし「こうしたカタログスペックを信じてはいけない」という声もある。なんでも、実測値ではカタログ値を下まわっていることがあるというのだ。

 シャシーダイナモなどと呼ばれるローラーを回転させる馬力計測装置を使って、愛車の最高出力を測定することは、それなりにカジュアルにできる時代となっている。規模の大きいカー用品店でも、シャシーダイナモを備えているお店は全国にあるほどだ。こうした機械を使って、愛車の最高出力を測ってみると、カタログスペックとは異なる結果になることがほとんど。もちろん個体差もあるので、完全に同じ数字となるほうが珍しいだろうが、誤差の範囲を超えて、カタログとは異なる数値が出ることも珍しくない。

 なぜ、このようなことが起きるのだろうか。まず言えるのは、カタログスペックとシャシーダイナモでは計測方法がまったく異なるということだ。カタログに記載されている最高出力はエンジン単体で計測した数値に、トランスミッションなど駆動系の抵抗を補正して導き出しているケースが多い。一方で、ローラータイプのシャシーダイナモではタイヤの抵抗も要素として入ってくるし、最高出力を計測する領域でタイヤのグリップが落ちてくると数値に影響してしまう。このように、そもそも計測方法が異なるため、横並びで比べるものではないのだ。

 しかし、ショップなどで計測した数値を「実馬力」といって絶対的な基準としてカタログスペックとの違いを指摘する声は多い。しかし、実馬力といっても本当にリアルな数値となっているとは限らない。というのも、シャシーダイナモであっても気温や気圧によって補正値を入れている。それだけではない、意図的に補正をするケースもある。タイヤを外して、ハブにアタッチメントを装着して計測する「ダイナパック」という計測機器の表示を見ると、tcfという項目がある。ここが「1.00」となっている場合は補正をしていない計測値だが、1.15などの数字が入っているときには補正によって数値を大きくしているということになる。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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