ロードノイズなどが出る走行中でもクルマの高級オーディオは意味があるのか? (2/2ページ)

ロードノイズを打ち消す技術も登場している

 とはいえ、カーオーディオは、走りだすとロードノイズや風切り音が、低音などをマスキングしてしまう宿命がある。が、かつて、アストンマーチン搭載の高級カーオーディオ、Bang&Olufsenを試聴した際、エンジンが快音(轟音?)を響かせたサウンドに見事にマッチングしたチューニングが施されている事実に驚かされたものだ。

 ずいぶん前の話だが、BOSEオートモービルの本社ファクトリーにお邪魔し、キャデラック用のBOSEサウンドシステム開発現場を訪ね、取材したことがある。そこでは標準装備だろうとオプションであろうと、車両と同時開発されていた。車内の音響解析はもちろん、たとえばドアのスピーカーを取り付けるため、BOSE搭載車とそうでない車両とでは、ドアの内部の構造(デットニング処理/防振、制振)まで違うことを知ることになった。

 そして、新車装着の高級カーオーディオは車載前提のため、もちろんロードノイズなどへの対策もしっかり行っている。ロードノイズが低音をマスキングしがちなことなど、オーディオメーカーのエンジニアは百も承知。

 純正装着タイヤで常識的な速度で走る限り、ロードノイズなどの影響は、こと高級カーオーディオに関しては最小限と言っていい。そもそも、カーオーディオは走りながら聴くのが普通。ドライブする車内空間を、最上のリスニングルームに変えてしまうマジックこそ、高級カーオーディオメーカーの音づくりの肝というわけだ。

 具体例では、ポルシェやキャデラック、マツダや日産車の搭載実績も多いBOSEサウンドシステムには、AUDIOPILOT2という走行ノイズ補償システムが備わり、車内のマイクでノイズを集音するとともに、音量を含め、自動補正をかけてくれる機能がある。

 同じくBOSEでは、スカイラインにアクティブ・サウンド・マネジメントというパワートレインが発する不快なノイズを自動的に抑える技術が生かされ、オーディオシステムから逆位相の波形を発信し、不要なノイズを打ち消すアルゴリズムを採用していたりする。

 ちなみに、BOSEは車内での音楽のサウンドをよりクリアなものにするノイズキャンセリングシステム「QuieteComfort Road Noise Control」を開発。2021年以降の新車に搭載すると発表している。

 そうした高度な技術は、コスト的に標準装備の廉価なカーオーディオでは実現できない。やはり、新車装着の車両と同時開発されたプレミアムオーディオシステムに敵うものはないというべきだろう(ドアのデッドニングなど別途必要になるケースもあるが)。

 結論として、ごくフツーのカーオーディオでは、停車時と走行中の聴こえ方はけっこう異なるものの(多くは走行ノイズによって低域~高域のバランスが崩れる感じ)、高級カーオーディオなら、そうしたところにも配慮が行き届いている。

 ロードノイズなどに影響されやすいクルージング中でも、車内という特殊なリスニング環境下での……という条件は付くものの、最上級のサウンドに包まれることが可能だ。家でオーディオを楽しむことがままならない人にとっては、最善の選択、リスニング環境となるに違いない。

 もっとも、ひと言で高級カーオーディオといってもメーカー、システムはさまざまで、クルマとのマッチングもある。聴き手の好みもある。車種ごとにメーカーが決められている事実もある。

 決して安い買い物ではないので、必ず搭載した試乗車にお気に入りの聴き込んだ音源を持ち込み、走りながら聴いてみることが大切(最近はCDスロットのないシステムもあるので要注意)。そして、そのカーオーディオの音に感動できるか否か。そこが最大のポイントで、もし感動できなければ、宝の持ち腐れになるだけだ。

 注意したいのは、高級カーオーディオのサウンドを楽しむのはいいが、音に酔いすぎないように。運転への注意が散漫になってはいけない。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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