プロでも手こずったのは過去の話? レーシングドライバーが選ぶ超乗りやすいスーパーカーとは (1/2ページ)

普段乗りが可能なほど実用性に優れたモデルも存在

 お金持ちで運転スキルも高い。そんな恵まれた人は世のなかで極々少数だろう。

 なんとかビジネスで成功し、スーパーカーを手に入れようと思った時、買ったクルマを乗りこなすことができなかったり、普通に乗るにも扱いにくかったりしたら非常に残念なことだ。だが多くの場合、購入前に徹底して試乗して購入することなどできない。

 そこで今回は僕の経験のなかで非常に乗りやすかったスーパーカーを何台か紹介しよう。

 とはいえスーパーカーのすべてを試乗したことがあるわけではないので、あくまで試乗テスト経験のある限られたモデルのなかからの紹介となることをお断りしておく。

1)ランボルギーニ・ガヤルド・スーパートロフェオ・ストラダーレ

 まず一番に挙げたいのは「ランボルギーニ・ガヤルド・スーパートロフェオ・ストラダーレ(STS)」だ。

 ランボルギーニは言わずと知れたイタリアの超高価なスーパーカーブランド。かつてはカウンタックやディアブロといったガルウィングのトップモデルがスーパーカー少年達の夢と憧れになっていた。

 だがカウンタックにしてもディアブロにしても、とてもじゃないが扱いにくくハンドリングや速さも褒められる代物ではなかった。多くの人が外見的な特徴とスペックから憧れの存在に祭り上げていたわけだが、その実際なイメージとは大きく異なっている。

 スペースフレームのシャシーに重たいV型12気筒エンジンを搭載し、後輪2輪駆動。ほとんどジュニアフォーミュラカー的な構造で剛性もパフォーマンスも圧倒的に足りていない。

 ランボルギーニが本当のスーパーカーとして実力を持ち始めたのは1999年にVW(フォルクスワーゲン)の傘下に入ってからと言っても過言ではないだろう。

 VWグループの資金と技術的バックアップを得て登場したムルシエラゴやガヤルドは登場当初からブランドイメージに適したパフォーマンスを実際に手に入れていた。そのベースを支える技術として採用されたのがAWDシステムだ。

 4輪駆動となり1輪当たりの負担馬力が半減されたことでスタビリティが高まり、トラクション性能は2倍に増す。その結果500馬力以上の高出力が実用的に引き出せるようになったのだ。

 実際、僕自身が今お金持ちだったとしたら、一番手に入れたいスーパーカーは「ムルシエラゴSV(スーパーベローチェ)」なのだ。

 だが一番に選んだのはガヤルド・STSだ。それはSTSの持っている走行性能、扱いやすさ、実用性などが極めて優れていたから。ガヤルド・STSの登場は2012年だ。

 当時ガヤルドベースのワンメイクレース「スーパートロフェオ」が開催され、そのストリートバージョンとして「ストラダーレ(ストリートを意味する)」が150台だけ限定生産された。

 ガヤルド・STSが搭載しているのは5.2リッターのV10自然吸気エンジンで570馬力の最高出力を搭載し4輪駆動であることからLP570-4と形式名が授けられた。ガヤルドベースながらシャシー剛性が大幅に高められ1340kgという軽量に仕上げられている。

 トランスミッションは6速ながらオートクラッチの2ペダルであり、その制御も素晴らしく一般道でのドライバビリティにも優れていた。

 驚いたのは僅か2〜3秒でフロントを50ミリ前後もリフトアップさせるスイッチが装備されたことと、4輪駆動ながら前輪の最大切れ角が大きく小回り性にも優れていたことだ。またフロントトランクは大きな容量があり、中型の旅行鞄を余裕で収納できる。

 市街地でも普段乗りとして使える実用性を備えながらサーキットへ持ち込めば圧倒的な速さと耐久性を示し、ノーマルサスペンションのままでもスリックタイヤを履きこなせる潜在性の高さを持たされていた。発売当時の価格は3100万円余。このガヤルド・STSを正常進化させ引継いでいるのが現在のウラカン・ペルフォルマンテであるといえる。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報