事故をゼロにしてくれる神装備じゃない! 運転者が認識すべき「自動ブレーキ」が作動しないケースとは (2/2ページ)

万能ではないが有用なシステムであることは間違いない

■日産インテリジェントエマージェンシーブレーキシステム

 もう一社、日産の「インテリジェントエマージェンシーブレーキシステム」が作動しないケースもみてみよう。

 日産のインテリジェントエマージェンシーブレーキは、少しややこしく、ほとんどの車種はマルチセンシングフロントカメラ方式で、キャラバンとフーガ、スカイラインのV6ターボ車はミリ派レーダー式、そしてスカラインのハイブリッド車のみ、ミリ波レーダーとカメラの併用となっている。

 まず主力のマルチセンシングフロントカメラ方式でいえば、

・車速約10km/h∼80km/hの範囲で作動し、車速約60km/h以上では、歩行者に対しては作動しない。

・アクセルペダルを強く踏み込んだときと、ハンドルを大きく、または素早くきったときは、システムによるブレーキの作動が解除される。

・前方車両と自車の速度の差が小さいときは作動しない。

 また以下の場合は、一時的に作動しない。

・フロントガラスの汚れなどにより、カメラが前方を認識できなくなったとき

・前方からの強い光により、 カメラが前方を認識できなくなったとき

・炎天下に駐車したときなど、カメラが高温になったとき
(室内の温度が下がると、自動的に作動を復帰)

 そして、インテリジェント エマージェンシーブレーキの設定をOFFにしたときと、VDCをOFFにしたときも、作動しなくなる。

 残念ながら、ミリ波レーダー式のスカイラインV6ターボは、対クルマに対しては作動するが、前方の歩行者は検知ができない。その代わり、悪天候にも強く、車間距離が広く、速度域が高くても前走車との距離や相対速度を検知できるのが長所。

 また日産の広報部に使用上の注意点を伺うと、「インテリジェントエマージェンシーブレーキはドライバーの安全運転を前提としたシステムであり、衝突回避の支援や衝突時の被害を軽減することを目的としています。運転時には、前方車両との車間距離を適切に保ち、常に安全運転を心がけてください。」とのことだった。

 そのほか「衝突被害軽減ブレーキ」全般にいえることとして、

・規定の速度を超えて走行した場合

・雪道のように滑りやすい路面

・急な下り坂

・街灯のある夜道

・大雨や濃霧

・太陽の逆光がまぶしい

 といったシチュエーションでは、正しく作動しない例があったことが、国土交通省の調査でわかっているので要注意。

 いずれにせよ、「衝突被害軽減ブレーキ」は、完全無欠の安全を保障する装置ではなく、条件が合致すれば、ドライバーのうっかりミスをフォローしてくれる便利な存在でしかない。

「走る・曲がる・止まる」という三要素については、機械任せにするのではなく、あくまでドライバーが責任を持って操作するという意識を再確認しておこう。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

愛車
日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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