なぜディーゼルをやめるのか? いま欧州の自動車メーカーが電動化に走るワケ (2/2ページ)

世界中でEV化を促進することが最善策!

 一方、リチウムイオンバッテリーの仕入れ価格がまだ高いといわれ、欧州の電動化は高価格帯の車種から進んでいる。したがってドイツの一般庶民は、乗り続けてきた古いディーゼル車で市内には入れないし、最新のディーゼル車や電動化の車両は高くて買えないと、困窮している実態がある。

 欧米は、基本的に鉄道や地下鉄、バスなどの公共交通機関が都市部でもそれほど縦横無尽に整備されているわけではなく、そもそも地方都市は日本で考える以上に人口が少ないので、生活の移動をクルマに頼るしかない。それにもかかわらず、庶民の足への対策が十分に施されていない状況にある。

 ガソリンエンジンについても、効率向上のため燃焼室へ直接燃料を噴射する、いわゆる直噴が採用されている。これはディーゼルエンジンと同じ燃料供給方法であるため、粒子状物質、すなわちPMと呼ばれる有害成分が排出される。したがって欧州では、ガソリンエンジン車に対しても直噴の場合にはGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルター)の装備がはじまっている。つまり、ガソリンにしてもディーゼルにしても、いっそうの排ガス浄化を実現し、同時に十分な加速性能を得るには、今後も排ガス浄化装置の充実が欠かせないのである。すなわち、それは価格の上昇につながる。

 電動化すれば、そうした排ガスの後処理装置の必要は減る。有害物質の出やすい高負荷運転でモーターを利用すればいい。モード測定中の排ガス浄化への負担を軽くすることができるだろう。最善策は、電気自動車(EV)化だ。自動車メーカー各社は、リチウムイオンバッテリーの原価の高さを嘆くが、いっそのこと世界中でEV化を促進すれば、原価は下がるはずだ。その時期を前倒しする意思を持てば、庶民が買えるEVを一日も早く実現することができる。

 売れ筋だと、車体が大柄で重い、エンジン車のSUVの販売に各自動車メーカーとも力を注ぎ、消費者もそれを喜ぶ姿がある。だが、それらは環境悪化=異常気象という自分たちの首を絞めるばかりだ。販売し、あるいは購入するなら、ジャガーI-PASEやメルセデス・ベンツEQCのようなEVに目を向けるべきである。それが、庶民に一日も早く手ごろな価格のEVを届ける道であるように思う。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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