【試乗】北欧育ちのボルボV60クロスカントリーで雪上ドライブ! 絶対的安心感のなかにも走る楽しみがある (2/2ページ)

安全に、そして確実に路面を捉えて安定した走りを披露する

 雪上のオーバルサークルへ。まずはこういう場所だからこそ全開でスタートしてみる。駆動トルクは一瞬空転したかどうか程度で加速を開始。車輌安定装置ESCの操作は9インチのセンターディスプレイにタッチして行う。ESC-OFFでも、こうして駆動トルク=トラクションはスムースに伝達される。ESC-ONにすると、空転をドライバーが感じるよりも先に制御されていて、気がついたときには「ん!? アクセルが勝手に絞られて駆動トルクが伝わっていない」……となる。

 この場合はオーバル旋回で、アクセルを踏み過ぎていてもステアリングで曲りたい、と言う意思表示をすると、舵角に見合うというかタイヤのスリップ率や前後輪の回転差、アクセル開度等その他から判断して、いま必要、最適な駆動力、ブレーキ制御などを行うため、エンジン出力は絞られ、挙動変化は抑え込まれて何も起らない。

 いや、何も起らなくはなかった。唯一の衝撃(!!)は、ESC-OFFで挙動を乱した際に、クルマが危険な状況にあると判断したとき、安全制御は瞬時にしてシートベルトを撒き上げ乗員をシートから動かないように拘束する。それもただ締め上げるレベルではなく、シートに完全に固定される感じは、問答無用で締め上げられて、ある意味安定性を増す。いやはや確かな安心感ではある。

 ステージをテクニカルコースに移してよりダイナミックな走行をすると、ボルボの神髄が見える。過酷な路面状況での安定走行のためのAWDだと勝手に決めつけていた。もちろんそれもそうだが、曲るハンドリングカーであることも実感する。と言っても曲げる為の飛び道具はとくにない。ステアリングからの舵角に応じて前後の駆動配分を緻密に制御して、曲げやすくするのみ。

 ESC-OFFでも曲る、と言うことはインに向いたことを確認してアクセルをガバッと踏み込むと、パワーオーバーステアから4輪ドリフトの姿勢も造り出せる。もちろんESC-ONであればコースの形状なりにステアリング操作を行えば普通にトレースして行く。

 例えば一般公道で急な下り坂に直面すると、それが圧雪であっても身がすくむ。氷雪ならば声も出ない、というほど身の危険を感じるものだ。そんな場合は、走行モードをオフロードに設定して急坂の頂上から、クルマ側が路面状況をタイヤのスリップ率から判断して個々のブレーキを最適に制御する「ヒルディセント」機能が働く。ドライバーはクルマ任せで静々と坂を下り終える。

 ボルボはかつて、手で引き上げるサイドブレーキ(パーキング)を第五のブレーキと言った。もちろんそれは駆動方式がFRの時代のことで、緊急時にサイドブレーキを掛けることで急激に姿勢変化させることで危機的状況を防ぐためだ。

 いまやサイドブレーキはPが付いたスイッチになった。それでもコレは、例えば走行中にドライバーが気を失うなど、緊急停止する必要がある場合、助手席から、あるいは後席からでもPスイッチを引き上げることで4輪に急制動が掛けられる。場合によればABSも介入しながらともかく安全に停止させる機能もある。

 筆者の愛車は4年前からボルボに代わりすでに2台目。例えば走行中に前車との車間距離や、高速道路でレーンチェンジする際に前車との、やはり距離感において、たびたび警告音と真っ赤なLEDで注意勧告を受ける。自動ブレーキが介入するほどではないが、個人的には大丈夫でも安全性という検知からは接近し過ぎ、だと言うことをボルボに教わる今日この頃。

 日本政府に自動ブレーキを承認させる突破口をボルボが切り拓いたことは過去の話になっているが、安全をクールに提唱するボルボのやり方はじつにスマートで日本人気質(派手好きは別)にマッチすると思う。


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