アリスト時代はバカ売れしたのになぜ衰退? レクサスGSが消えるワケ (1/2ページ)

今GSが売れないのはトヨタ全体のラインアップにも関係する

 2020年4月23日にトヨタからレクサスGSの特別仕様車“Eternal Touring”が発表された。そのプレリリースなかには、GSが2020年8月で生産終了することが記されている。

 世界市場でのGSの初代は、日本市場では初代トヨタ・アリストとして販売されていたモデルで、1993年にデビューしている。その後2代目までは日本国内ではアリストの車名で販売され、3代目(世界市場)は2005年に日本国内でのレクサス店開業に合わせ、日本国内でもレクサスGSとしてラインアップされた。現行4代目(世界市場)は2012年にデビューしているので、モデル自体もかなり“ご長寿”となっている。その意味では現状の販売実績もなんとなく納得できてしまう。

 今年に入ってからのGSの販売台数は1月が66台、2月が64台、3月が85台などと、二桁台数が続いている。メイン市場となるアメリカを見ても、2020年1月から3月の累計販売台数は624台、日本とアメリカの市場規模を考えれば、ほぼ同じレベルで“売れていない”といえよう。

 日本国内ではアリスト時代、とくに初代はよく売れた。バブル経済時代に開発が進められ、バブル経済崩壊直後にデビューしているのだが、まだまだバブル経済を世のなかでは引きずっていたため、“3ナンバーワイドボディ”車の引き合いが多く、日本的な高級サルーンの多かったトヨタの同クラス車のなかでは異彩を放つツーリングサルーン的キャラクターというのもウケ、よく売れたようだ。

 ただ、そのようなニーズはトヨタブランド車だったからこそ成立した。クラウンやマークⅡ(ハイソカーなどと呼ばれた4ドアハードトップ車がよく売れた)があったからこそ、“ちょっと違うな”と、アリストという選択をする消費者がいたのだ。

 これがレクサスブランドとしてラインアップされれば勝手は随分と変わってくる。“おもてなし”をキーワードとした、かなり特徴的な販売方法のなか、GSになってからは、メルセデスベンツやBMWなど、欧州系プレミアムブランドユーザーをメインターゲットとして販売促進活動が展開された。わかりやすくいえば、クラウンやマークⅡなどにはあまり興味を示さない層が新たなターゲットとなったのだ。

 そうなると、正直いってクルマに求められる性能だけでなく、ブランドステイタスというものが販売には大きく影響してくる。アメリカでは大成功を収めたレクサスだが、国内開業当初は“レクサス=トヨタ”というイメージすら消費者の間には定着しておらず、むしろトヨタブランドのほうが認知度が高いだけでなく、クラウンというより多くの日本人が高級車と認知するクルマもラインアップしていたので、レクサスよりもトヨタに格上のイメージを持つひとも多かった。

 日本市場で人気の高い、ドイツ系プレミアムセダンは、メルセデスベンツCクラス、BMW3シリーズ、アウディA4などとなる。これらのクルマは一昔前に南カリフォルニアの新車販売現場をまわると、「ちっちゃいBMW(あるいはベンツ)」などと呼ばれていた。アメリカ市場では、Cクラスや3シリーズの格上となる、Eクラスや5シリーズクラスが売れ筋となっていた(世界的にもこの傾向が強い)。つまり、日本ではワンクラス下のサイズのモデルがよく売れていたので、GSは日本市場でいえばサイズが中途半端だったのである。日本では初代GSデビューから1年ほどしてLSがデビューし、ますますGSの影が薄くなっていった。LSはそれまで日本では、トヨタ・セルシオと呼ばれよく売れており、LSとなってからも役員車両など法人需要も見込めるので、その分GSよりはよく売れた。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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