かつてはハリウッド俳優も出演したが登録車では激減! タレント起用CMが軽自動車ばかりなワケ

ライバルとの差別化が出しにくいため、CMのインパクトが重要に!

 2020年7月よりダイハツ・タフトのテレビCMが、俳優の中川大志さんが出演するものとなった。正式発売からしばらくは、お笑いコンビ“千鳥”の大悟さんがCMに出てくるキャラクター“タフトン”の声として出演しているのみであった。なお、中川大志さんが登場するパターンでは、タフトンは引き続き登場し、さらにナレーションとして同じ千鳥のノブさんも出演している。

 かつては多くのメーカーでこぞって、自社のクルマのテレビCMに俳優などのキャラクターを登場させる、いわゆる“キャラクターCM”が目立っていたが、いまではスズキとダイハツで見かける程度となってきている。

 両メーカーのCMにいまだにキャラクターCMが多いという傾向については、スズキとダイハツは軽自動車を多くラインアップしているところにあると考えられる。軽自動車はボディサイズやエンジン排気量など、その規格が厳しく、クルマとしての基本性能でライバルメーカーと明確な差別化をつけるのは難しい。そうなると、エクステリアやインテリアでの違いをメインに消費者に訴求していかなければならない。

 そこで人気芸能人をキャラクターとして起用することにより、その起用された芸能人のイメージとクルマのイメージをリンクさせることで消費者にインパクトを与えることを狙っているとのことである。残念な話でもあるが、軽自動車については、“生活の移動手段”という部分も大きいのか、メーカーや車名などの“指名買い”というものは少ない。極端な話だと、見た目が気に入って買ってから、“車名は?”となることもあるようだ。またCMにお気に入りの芸能人が登場していれば、“●●さんの出ているクルマ”と、指名買いも期待できるのである。

 かつて軽自動車のCMには、トレンディドラマなどで人気を博した女優など、女性の間でトレンドリーダーのような女性が多く起用されていた。軽自動車のユーザーは女性がメインで、その女性が憧れる女優などの芸能人を起用して販売促進を強化するといった図式だったのだが、これではいまのような男女平等社会では、“軽自動車は女性の乗りもの”という偏見に満ちたものを感じるなどとクレームにもなりかねないので、完全にNGとなるだろう。

 そのようなことも考慮されたのか、いまどきのキャラクターCMは、軽自動車であっても人気の若手男性俳優をはじめ、多彩な顔ぶれとなっている。市場環境の変化というものもあるだろう。例えば、確かにいまでも軽自動車ユーザーでは女性が目立つが、世の中のダウンサイズの動きもある。それによってセカンドカー需要だけではなく、ファーストカーとしてのニーズも増えたこともあり、女性、男性に関係なく需要が伸びている。

 また、リタイア層のニーズも高まっているので、性別だけでなくユーザー年齢層も幅広いものとなってきている。そのため以前のように一部のターゲット層に強くアピールできるキャラクターではなく、幅広い層にアピールできるキャラクターが起用されているといったところで、キャラクターCMも変化してきているのだ。

 ちなみに、バブル経済のころには幅広い車種において、海外の、例えばハリウッド俳優のような“超大物”も数多くCMに起用された。さぞやギャラも高額なのかと思い、関係者に話を聞くと、「じつは日本の大物俳優さんを起用するよりは、リーズナブルに済むんですよ。日本人の場合は、ギャラ以外にももろもろかかるので……」と答えてくれたのを覚えている。当時の日本、とくに日本車は世界では、史上最大といってもいいほどの群を抜いた最先端のトレンドや技術を採り入れ、高い品質を誇っており、世界中で注目されていた。日本で日本車のテレビCMに出演することは、ある意味ステイタスでもあったようだ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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