販売を目的とせずクルマと接する場を設ける動きは広がっている
新車を眺めながらカフェで時間を過ごすという場が最初に現れたのは、ホンダが1985年に本社を青山へ移転した際に1階に設けたウェルカムプラザではないだろうか。輸入車では、メルセデス・ベンツが本社とは別の東京・六本木に開いたメルセデス・ベンツ・コネクション(現在はメルセデス・ミー)が9年前に営業をはじめた。展示施設という意味では、1963年に東京・銀座四丁目にできた日産ギャラリー(現在は日産クロッシング)がもっと古い。
販売することを目的とせず、ゆっくりクルマと接する場を設ける動きは、BMWやボルボ、そしてレクサスにも波及している。
今後注目されるのは、ポルシェが千葉県の木更津に建設中で、来年には開業予定のエクスペリエンスセンターだ。こちらは、各種ポルシェ車を存分に運転し、その性能の高さや奥深さを経験できる場になる予定だ。すでにポルシェでは、世界に7~8か所展開している。
ポルシェといえども、今日では販売の主力がSUV(スポーツ多目的車)となり、パナメーラのような乗用車も扱う。911などのスポーツカーが主体であれば、レース用のサーキットを借りた走行会でかまわないが、いくら性能が高いといってもSUVをただサーキットで走らせるだけでは、本来の商品力を味わい尽くせない。
エクスペリエンスセンターでは、スポーツカーのためのコースはもちろん、SUVで悪路走破性を試せる未舗装路があり、そしてクラブハウスでくつろぐこともできる予定だ。
ポルシェのような世界的に名の知られたスポーツカーメーカーが、なぜ、自らそのような施設を建設するのか。ポルシェは、いま「買ってもらうブランドから、選んでもらえるブランド」への転換をはかっている。背景にあるのは、電動化やシェアリングサービス、自動運転などへ向かおうとしている市場変化だ。