「入った」「回った」で安心してはダメ! 同じに見える「ホイールナット」の流用が「危険」な理由とは

ナットの形状などはメーカーごとに違いがある

 輸入車はボルトで止めるが、日本車の場合、ホイールはナットを使って固定されているのは、ご存じの方も多いだろう。このナット、一見するとどれも同じに見えるため、意外にトラブルが多いポイントでもある。簡単に言ってしまえば、同じように見えるものの、メーカーや車種によって、違いがあったりするのだ。もちろん同じクルマで、ホイールを交換しないでそのまま乗り続けるなら、なんら問題はないが、社外品はもちろんのこと、他メーカーの純正ホイールを流用するときにも注意が必要だ。

 まず一番、違いがわかりやすいのはナット径と呼ばれる、六角部分のサイズだ。対向面の距離を表していて、19mmと21mmのふたつに分かれる。内側の軸、つまりネジ径は日本車の場合、すべて12mm(M12)となので、ナット径が違っていても、なんとか使えるのでは? と思うかもしれない。実際はネジピッチが異なることもあるので、すべて流用できるわけではないので悪しからずだ。

 ネジピッチとはネジ山の間隔で、1.25mmと1.5mmの2種類がある。ネジピッチが違うと、最初の何まわしかは入るが、それ以上は進まなくなってしまうし、無理に回すとネジ山を舐めてしまうことになるので、要注意だ。

 またネジピッチが同じでもナット径が違うと、接地面が小さくなるので固定力が減ったり、ホイールのナット穴に合わなくて、入らないこともありうるので、ネジピッチだけでなく、ナット径も同じものを使うようにしたい。

 以上、ナットにはいろいろと各数値があって、これらを守れば流用は可能かというと、じつはまだ注意点がある。それが形状だ。ナットを外して横から見たり、ホイール側のアタリ面を見てもらえばわかるように、多くのホイールは斜めになっている。いわゆるテーパー形状で、はまるナットもテーパーになっている必要があって、いわゆるテーパーナットと呼ばれるものが該当する。日本車の場合、ほとんどが60度テーパーなので、形状とナットの各数値が合っていれば、流用は可能だ。

 ただ、形状にも注意点があって、トヨタ/レクサス、日産、三菱の一部に使われているのが、平面座と呼ばれる平らなタイプ。テーパーの場合は、締め込んでいくと自然にホイールのセンターが出ることを重視していて、この平面座はホイールを押さえる力を重視しているという違いがある。

 さらに落とし穴があって、ホンダの場合は、テーパーのように見えて、じつは丸くなっている球面を使用していて、アルミだけでなく、スチールホイールにも使われているから注意が必要だ。丸くすることでセンター出しと固定力を両立させるというホンダらしいこだわりなのだが、流用時には間違えやすいし、テーパーナットでも固定はできるのでなおさら。逆もしかりなのだが、いずれにしても、ナットとホイールがしっかりと当たらないので、緩みやすく、危険なことにもなりかねないので、事前に確認しておきたい。

 一見すると同じように見えるナットも、細かく見ると違いは多くて、奥が深いというわけだ。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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