高速道路の「120km/h」は危険か否か? レーシングドライバーが語る「運転者の意識」向上の必要性とは (2/2ページ)

きちんと状況を把握し正しい車線と車速で走ることが大事

 東名高速の一部区間で最高速度が120km/hに引き上げられたことで、ドライバーが意識すべきことはクルマ対クルマの相対速度差を大きく作らないということだ。120km/hで走る走行車線に80km/hのクルマが車線変更したら速度差40km/hになる。走行車線で120km/h近くまで加速してから、追い越し車線に追いついてくる車両がないことを確認して車線変更するという丁寧な手順が求められる。そのために普段より遠い前方向を走行しているクルマの動きにもより手前から注意を払い、自分のクルマの周囲360度をつねにモニターしていなければならない。

 最近の運転アシスト機能はそうした場面で大いに役にたつ。だが運転経験が十分でないビギナーやサンデードライバー、感覚に衰えを感じている高齢ドライバーには、そうした注意を払う能力が万全とは言えないだろう。

 120km/hに引き上げられたことは、120km/hを誰でもどんな状況でも出してよい、安全が保証されているとうことではまったくない。絶対速度が高まれば否応なく衝突時のエネルギーは大きくなり、リスクも高くなる。その事実を認識し、より慎重に走行することが求められている。

 車両やタイヤのメンテナンス、最新モデルへの乗り換えなども積極的に検討し、いかに安全を確保するかを真剣に考え、走行区分を徹底して守る。ドライバーひとりひとりの安全意識をより高めていかなければ、120km/hへ引き上げられたことの罪悪だけが交通社会に陰を落とすことになってしまうだろう。クルマが高性能になっているというだけでなく、ドライバーのモラルやマナー、運転スキル、安全に対する意識が高まっているかどうかをより論点として着目すべきなのだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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