作りに作ったり3000万台! 歴史と記憶に残る「偉大すぎる」ダイハツの名車5選 (2/2ページ)

かつてキレキレのモータースポーツ専用車が存在した

3)ストーリアX4

 ダイハツの歴史においてサファリラリーの優勝などモータースポーツでの活躍も見逃せないが、そこには“キレキレ”のモータースポーツ専用車をリリースするという一面があったことを示している。古くはシャレード926(1984年)に始まる系譜は、ブーンX4(2006年)といったモデルも記憶に残るが、実際にハンドルを握ったモデルとして「ストーリアX4」の荒々しいまでの乗り味はいまだ忘れることができない。

 それまでミラX4という660の4気筒ターボを積んだモータースポーツベースでライバルと戦っていたダイハツが、ターボ係数1.4をかけて1.0リッター以下にすべしというレギュレーションのなかでももっとも有効になるエンジン排気量713ccをわざわざ専用で起こし、さらに軽自動車よりもトレッド幅などで有利なリッターカーのストーリアに、その専用エンジンと駆動系を載せることで生まれたのがストーリアX4だ。

 スペックシートは意味がないほどのパワフルで天井知らずに回っていくエンジンは、軽自動車用エンジンをメーカーが威信をかけてチューニングするとここまでいくという証明であったし、簡単にブーストアップもできる構造だったことにも驚かされた。

4)コペン

 そんなポテンシャルをもつ軽自動車史上最強の4気筒ターボといえる「JB型」エンジンを積んだオープンカーが2002年に誕生した「コペン」だ。軽自動車のサイズ、価格帯の範囲において、電動で開閉するハードトップを備えたオープンカーが、ショーモデルの「KOPEN」で終わらずに市販にこぎ着けたことは、素直に賞賛に値すると感じたものだ。

 ルーフを格納するために設けられた大きなトランクは、クローズド状態であればゴルフバッグが斜めに収まるほどのスペースで、そうした実用的なパッケージも含めて、ライト感覚のスポーツカーとして記憶に残る。現行コペンの3気筒エンジンと異なり、高い潜在能力を持つ「JB-DET」型エンジンを搭載していたこと(そのポテンシャルを解放した状態はストーリアX4が示していた)も、伝説的なモデルとなるにふさわしい要素だった。

5)X−021

 最後に、ダイハツの累計3000万台には含まれないが、個人的にもっとも記憶に残っているダイハツ車を紹介しよう。それが1991年の東京モーターショーに出展されたライトウェイトスポーツカーのコンセプトモデル「X-021」だ。当時のシャレードに搭載されていた1.6リッターエンジンを縦置きとしてアルミ製シャシーに搭載したFRスポーツカーは、実際に市販化に向けてプロジェクトが進んでいた。

 当時、すでに自動車メディアに属して活動していた自分は、個人的に欲しいという気持ちもあって、つてを頼ってX-021の情報を集めていたが、最終的に「実際に販売するときには連絡しますね」という回答を得ることができていた。その段階では関係者一同、遠からず市販することを信じて疑っていなかった。

 残念ながら、バブル経済の崩壊もあって、X-021の市販プロジェクトは中止され、モーターショーで展示されたプロトタイプが、その製作に関わった童夢に保存されているというが、ダイハツのFRオープンスポーツという夢がいつか現実になったとき、X-021に再びスポットライトが当たることだろう。はたして、そうした日がやって来るのか楽しみでもあり、一生来ないのではないかと不安にもなるが、心のどこかでは常に期待する気持ちがくすぶっている。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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モトブログを作ること
好きな有名人
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