登録車では圧倒的人気! いまコンパクトカーが「バカ売れ」するワケ (2/2ページ)

新しくはない「ルーミー」もランクキング上位に

 背の高いコンパクトカーのルーミー&トヨタ・タンクは、全店が全車を売る体制になったのを受けて、2020年9月のマイナーチェンジで姉妹車のタンクを廃止した。登録台数の多かったルーミーに絞り、カスタムはメッキグリルの存在感をさらに強めている。そこでルーミーは販売ランキングの上位に入った。

 このようにトヨタのコンパクトカーは、人気車については、全店が全車を扱う体制になったこともあって売れ行きを一層伸ばした。その半面、もともと販売が低調だったトヨタ・ポルテ&トヨタ・スペイドなどは、ユーザーを奪われてさらに落ち込んでいる。

 ライズは、5ナンバーサイズに収まる数少ないコンパクトSUVだ。コンパクトカーとSUVという2つの売れ筋カテゴリーの要素を併せ持つ。前輪駆動ベースのSUVだが、フロントマスクには悪路向けのSUVに通じる野性味があり、人気車のトヨタRAV4を小さくしたような印象も受ける。SUVに見られる原点回帰のトレンドに沿ったことも含めて、好調に売れる要素が豊富で登録台数も伸びた。

 コンパクトな車種が好調に売れる背景には、最近の車両価格の上昇もある。たとえば20年前に販売されていた日産セレナやホンダ・ステップワゴンの売れ筋グレードは、200万円前後だったが、現行型は標準ボディのノーマルエンジン車でも270万円に達する。消費増税も含めて、この2車種の価格は1.3倍に高まった。安全装備の充実を考えれば、現行型が買い得だが、高額になったことも事実だ。そこで現時点で、安全装備を充実させながら200万円前後に収まるクルマを探すと、コンパクトカーになる。

 所得の伸び悩みも見逃せない。平均所得は1990年代の後半をピークに下がり、直近では上向いたものの、今でも20年前の水準に戻っていない。クルマの値上げと所得の伸び悩みで、軽自動車とコンパクトな車種が好調に売れる現実もある。つまりコンパクトカーの高人気は、ユーザーが抱く不満の裏返しともいえるだろう。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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