事故で「ペダルを踏んでも減速しなかった」という「突然のブレーキの故障」は起こり得るのか? (2/2ページ)

突然壊れることは考えにくいが定期点検は重要

 ブレーキを作動させる圧力を伝えるのは、ブレーキ液だ。これも次第に水分を含んで、油圧を正しく伝えにくくなる。そこで、定期的な交換が必要になる。また、パッドやローター、あるいはドラムも、摩擦させて使うため摩耗する。ことにパッドは減りやすいので、これも車検などを目安に減り具合を確認し、新品に交換することが肝心だ。またかなり距離を走り込んだクルマの場合は、ディスクやドラムも摩耗していくので、その交換を必要とする場合もある。

 ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が壊れた場合は、通常と変わりなく減速できるが、滑りやすい路面状況などでの安定性は損なわれる恐れがある。

 何か部品が突然壊れるということは通常の運転ではまずないだろう。一方で、日々使っているクルマでは、ブレーキ液の劣化やパッドの摩耗などは徐々に進行することなので、気づきにくい。そこで、定期点検や車検の意味がでてくる。年間走行距離の違いで、一律にはいえないが、点検の際に必ず調べなければならない項目にブレーキがある。

 もう一つ、ブレーキ性能に関わるのがタイヤだ。ブレーキをいかに整備しても、あるいはブランド品の高性能ブレーキを装備しても、タイヤが摩耗していたり、グリップの高くないタイヤを装着していたりすると、本来のブレーキ性能を発揮しきれないことになる。ブレーキ性能とタイヤ性能は常に一組で考え、兼ね合いをはかることが、価格と性能との調和、そして安全を守る要になる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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