トヨタの超小型EV「C+pod」がもつ大いなる可能性と「懸念」される事態 (1/2ページ)

次世代小型モビリティとして期待大の最新EV

 トヨタは、2030年までに国内市場に適切な電気自動車(EV)を発売するとしている。一方、世界的な電動車への移行が進むなか、国内へはEV導入をしないのかということへの回答が、超小型モビリティとしての2人乗りEV「C+pod(シーポッド)」の発売である。これは、2年前に催された記者会見の場で示された計画の実現である。

 性能は、車載のリチウムイオンバッテリーが9.6kWhで、WLTCによる一充電走行距離は150kmである。価格は、165~171.6万円だ。

 この性能は、現在は衝突安全対応のため車体全長が伸びて登録車扱いだが、元は軽自動車のEVとして誕生した三菱i-MiEVの一充電走行距離164kmに近い。ただし、i-MiEVはJC08モード値なので、トヨタのシーポッドのほうが優れているかもしれない。実際、軽自動車と比べ車体寸法が大幅に小さく、車両重量も半分近いシーポッドの消費電力は、54Wh/kmと、i-MiEVの3分の1ほどでしかない(これもモードが異なるので、もっと効率は良いだろう)。

 いずれにしても、シーポッドの性能は、私が以前から構想してきた100km100万円軽商用EVの求めた価格や性能に近く、おおいに期待するEVの一台だ。

 ところが、これも当初からの計画だとはいえ、昨年末からの発売は、法人や自治体への限定販売に止まる。一般消費者へは来年からの予定だ。都内に住む私の友人はさっそく購入を考えたが、諦めている。また、日産と三菱自からは、来年以降、軽EVの発売も予定されているので、そうなると、価格と性能次第では競合することになるかもしれない。

 トヨタが、個人ではなく企業や自治体など団体への限定販売とした背景にあるのは、EV参入への慎重な姿勢によるものだろう。

 ひとつは、国内のEV市場の深刻な障害に対する懸念ではないか。具体的には、マンションなど集合住宅への200Vの普通充電コンセント設置が、実質的にできない状況がある。住民の共同利用の場となる駐車場にコンセントを設置するには、管理組合での合意が必要で、それがほとんどの場合否決されているからだ。i-MiEVやリーフが発売されてから10年以上を過ぎてなお、この課題は解決されていない。集合住宅に住む消費者に失望を与えるだけでなく、販売店も対応に苦慮するだろう。

 また、一般消費者へ販売するとしたら、全国のトヨタ販売店で営業のEV学習や、EV整備の実習が必要になる。それに投じた費用に対し、販売が進まない可能性が高いこともトヨタの懸念材料だろう。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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