生き残るのは意外な業種! クルマの電動化で存続の危機を迎えるサプライヤーとは (2/2ページ)

変速機は生き残る可能性大

 さて、自動車からエンジンが消えるということは変速機も不要になる……と思ってしまうかもしれない。実際、現在の電気自動車のほとんどは固定ギヤでの変速システムを採用していて、いわゆる多段変速機は積んでいないのが現状だ。

 とはいえ、モーターの高効率化を考えると、2~3速の多段変速機は必要になるであろうというのが、現時点での自動車業界での未来予想図。また、パッケージングを考えるとモーターと変速機は一体化するというのもトレンドだ。そのため変速機メーカーについては電動化時代になっても市場は残るといえる。

 むしろ電動化によってノイズが少なく、伝達効率に優れた歯車についてのニーズは高まる方向にあり、変速機に関わる技術力のあるサプライヤーにとっては市場の拡大さえも期待できるかもしれない。しかしながら、変速段が減るのは間違いなく、部品単価が下がる可能性も否めない。

 そのほかダンパー、スプリングといった足回り系の部品については電動化時代になっても、変わらず存在するであろう。自動運動まで考慮すると、乗り心地が商品価値に占める割合は増えるはずで、サスペンションについては高性能・高付加価値な製品が拡大していきそうだ。タイヤも同様で、これまで以上に静粛性に優れたタイヤを開発できる技術力がメーカーに求められるようになるだろう。

 ブレーキパッドも電動化時代になくならない部品だが、電動車の特徴である回生ブレーキ(モーターで発電することで減速する仕組み)をフル活用するとブレーキパッドを使うのは、停止保持くらいになるためパッドの消耗が緩やかになる傾向にある。必要なパーツであることは間違いなくても、消費量自体は減ってしまうかもしれない。

 結論をまとめると、自動車の電動化によってエンジンがなくなると不要になる部品は増えてしまうのは事実だ。ティア1と呼ばれる大手サプライヤーであれば、多角的に製品開発をしているので、エンジン車向けのパーツが減ったぶんを電動車向けパーツでカバーするといったことも可能だが、そうはいかない企業が出てくる可能性は大きい。生き残るためには、部品メーカーも電動化シフトを加速させなければならないのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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