【試乗】マツダ3の「改良」に驚き! ハード面を変えずに「馬力」や「トルク」が変更されたマジックとは (2/2ページ)

SKYACTIV-Dでは高回転域でのパワーの落ち込みが改善

 次に1.8リッター SKYACTIV-D搭載の4ドアセダンと6速ATの組み合わせたFF仕様を試す。1.8リッター直4直噴ディーゼルターボエンジンは従来の最高出力が116馬力だったのに対し、今回130馬力に引き上げられた。また最大トルクは270N・mのままだが1600rpm〜2600rpmという実用回転域を中心に広い範囲で高トルクが発揮できるようになりドライバビリティも動力性能も高められている。主に燃料噴射制御の最適化とEGRの緻密な制御によりマツダが提唱する「躍度」を向上させているのだ。

 ディーゼルエンジンは排気ガス浄化装置などの制御もあるため実用域でスロットル操作とリニアな応答性を作り込むのが難しい。その辺が今回の改良で改善されたことになる。

 走行した印象としてはCX-5など上級モデルが搭載する2.2リッターのディーゼルユニットのような力強さには及ばないものの、従来モデルで感じていた高回転域でのパワーの落ち込みが改善され、高速走行もよりラクにこなせるようになったといえる。市街地での扱いやすさもATとの協調制御で高まり、躍度の高さを確かに感じ取ることができた。

 今回の試乗車にはなかったがSKYACTIV-XのAWD(4輪駆動)モデルの改良にも触れておきたい。今回SKYACTIV-Xがパワーアップされたことで駆動力をより有効に引き出し、積極的に前後へ配分することができるようになった。

 面白いのは前後のデファレンシャルに異なった減速比を与え1%ほど前輪を速く回していることだ。これはGRヤリスが行ったのと同じ手法で、GRヤリスは0.7%の前後比を与えてリヤ寄りの駆動配分としている。

 マツダによればマツダ3登場時からこの手法を導入しており、GRヤリスに先んじて採用しているという。ただGRヤリスはセンタートランスファーとリヤデフで減速させているのに対し、マツダは前後のデフ比で差をつけているという違いがある。

 この方式で前輪を速く回すことで後輪へのトルク配分が増し、結果リヤがリバース傾向となってアンダーステアが解消されるのだ。路面のミュー判定を行わず、固定した制御ロジックでドライバーの「曲がりたい」という意思表示に対しメカニズムが呼応することで「意のまま性」が高められていると言える。DSCをオフにしておけば雪道でゼロカウンター走行も行えそうなので機会があれば試してみたいと思っている。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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