どんな役割? そもそもクルマにはなぜ「マフラー」が必要なのか (2/2ページ)

排気系パーツは環境意識の高まりとともに存在感が薄くなっている

 一方で、エンジンは大気を吸入し、燃料を混ぜ合わせ、シリンダー内で燃焼させて運動エネルギーを得るという、基本的な働きがある。そしてほとんどの燃料は、原油から精製されるガソリンや軽油を燃料として使っているが、石油が有機物か、無機物かという話は別にして、炭素を主成分とする石油を燃焼させるため、当然ながら燃焼ガス(排出ガス)にも炭素がらみの物質が含まれる。

 一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素などで、これ以外にも窒素化合物や粒子状物質などが含まれるため、これらは有害物質として、環境保全に対して悪影響を与える原因となっている。自動車の排出ガスは、こうしたものが主成分となっているため、最近では、自動車の排気系=排出ガス=反環境保全のイメージで受け取られることを危惧し、その存在をあからさまにしない意識が働くようになってきた。

 こうした世のなかの傾向を受け、環境性能をうたう車両や、道具としての実用性を重視するモデルでは、排気ガスをイメージさせるマフラー(の出口)の存在を、意図的に隠そうというデザイントレンドが生まれてきた。これまでなら、マフラーのテールパイプを当たり前に露出するデザインだった車両リヤエンドの処理が、それを意図的に隠したり、テールパイプを下向きにデザインする車両が増えてきた。

 今後、世界的に脱炭素社会の方向に向かっていくことになり、内燃機関を動力源とする車両も、早い地域では2030年ごろに新車販売ラインアップから姿を消す見通しとなっている。当然EV化が加速することになるが、電気モーターを動力源とする車両にとっては、排気系という言葉は無縁の存在であり、当然ながらマフラーの存在もあり得ない。

 思い返せば、1890年代から人類の身近な存在として自動車の動力源として機能してきた内燃機関は、現在がもっとも熟成した姿、完成された状態と考えることもできるだろう。環境保全は絶対に必要だが、行く先が見えた過渡期である現在は、使い勝手が良く小型コンパクトで高性能な内燃機関の走り味を堪能できる、クルマ好きにとっては最後のチャンスと言える時期なのかもしれない。


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