キワものマニア御用達「だった」シトロエン! 突如「日本の一般人でも乗れる」自動車メーカーになったワケ (1/2ページ)

欧州でも安くて乗り心地はいいけど攻めすぎなブランド

 先にいっておくが、現オーナーは無論、昔っからの好事家にも相当に失礼なことを書く。フランスの自動車メーカーのなかでも「おフランス度」が高いが、その高さゆえの変態っぷり&こじらせっぷりがハンパなくて、でも数寄者には替えの効かないメーカーであり続けてきたシトロエンが、なぜ近頃は人気なのか?

 そりゃあC4ピカソ&グランドピカソ(現行名はグランドC4スペースツアラー)の頃からクルマ自体がよくなって、C3やC3エアクロスSUVやC5エアクロスSUVの評判がよくて、ベルランゴも売れまくっているからでしょ? と、言うは易しだが、それだけでは答えになっていない。ここ10年ほどでシトロエンが、なぜ売れるクルマになっていったか、そこが根本的な問いだ。

 じつは欧州でもシトロエンといえば、価格は安くて乗り心地はいいけど、品質的にキワキワを突き過ぎた、でも考え方が進歩的な自動車メーカーという扱いだった。その元祖は、コウモリ傘に4輪を付けたような、と形容された大衆車の2CV、あるいは油圧でブレーキと足まわりを繋いで車体を統合制御するというハイドロニューマティックを備え、柔らかくも芯の強い唯一無二の乗り心地やハンドリングを実現した初代DS、といった1950年代にまで遡る。いわば田舎で農民が乗る大衆車と、大統領専用車に相応しい高級車という、両極端をカバーできるメーカーだった。

 昭和育ちのフランス人は多かれ少なかれ、2CVで学校に迎えに来る両親が嫌だったとか、DSに乗せてやるといわれ喜んで乗ったら、クルマ酔いして吐いたとか、プチ苦い経験とともに、いずれのクルマもバカンスの時は最高に楽しかったという記憶をもっている。数年前、シトロエンから「SEETROËN(シートロエン)」という、クルマ酔いを予防するという触れ込みの眼鏡がリリースされたが、あれは昭和の記憶をベースとする自虐ネタでもあったのだ。


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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