「本革シート」なのに座り心地が悪い! 布のほうがいいこともある「高級装備」に潜む難しさ (2/2ページ)

最近はふんわりとしたソファ的なかけ心地の本革シートも登場

 筆者はずいぶん昔、W124と呼ばれたメルセデスベンツEクラスの本革シートモデルを所有していたことがあるのだが、ビシッとしたシートの張りの強さは数年乗っても解消されず、その前に乗っていたマセラティのファブリックシートのかけ心地に良さと比較して、それ以外はすべて満足していたものの、手放すまでシート選びに関しては後悔したものだった。

 以来、自身の愛車は、国産、輸入車を問わずファブリックシートと決めていたのだが、ここにきて、本革シートでもファブリックシートと変わらない、ふんわりとしたソファ的なかけ心地と、お尻をじんわり沈み込ませることで絶妙なサポート感、ホールド感が得られるシートに出会ってしまったのである(だからこの記事を書いてます)。

 それは、日産ノートオーラのレザーセレクショングレードの本革シートである。一目見て、これは座り心地が良さそうと思えたのも本当で、人間工学に基づいて疲労が低減するゼログラビティシートを基本に、深いうねのある表皮=キルティングラインの向きで体の滑りを抑えた、ワディング10mm(低反発層)ソフトウレタン20mm 高級車並の30mmのソフト層による3層構造の肌触りもいい本革シートである。

 かけ心地はふんわりソフトで、しかしノートのように「かけ心地はソフトだけど底付き感がある」のとは違い、フランスの高級ソファのような、ソフトでありながら、お尻の沈み込みと背中のやさしいホールド感ある、底付き感のない、高級感あるデザイン性も光る、小柄、体重の軽い人でも満足できるリッチなかけ心地が得られるプレミアムな本革シートだったのだ(同じ表皮デザインのファブリックシートもなかなかのかけ心地のよさがある)。

 しかも、肩まわりのホールド感をあえて適度に逃がすことで(ガッチリと包まない)、ステアリングを左右切った時の目線の無駄な動きを抑制。つまり、カーブの連続でも視線が左右に振られにくく、運転がしやすく感じ、結果的に長時間の着座でも疲れにくい、いつまでも座っていたくなる心地よいシートなのだからゴキゲンだ。これなら筆者の体形、体重でも、積極的に本革シートを選びたくなるというものだ。

 本革シートは張りが強く、好みじゃない……と思っていた人や、小柄で体重の軽い人も、ぜひノートオーラの本革シートのかけ心地を味わってほしいと思う。万一、ファブリックシートしか試乗できずにレザーセレクションを選択したとしても、心地よいかけ心地はファブリックシートの延長線上にあるから心配無用。本革シート分の価格アップが戦略的に(?)抑えられているのも嬉しい限りである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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