「偉大なる草レース」のS耐でも一番安くて2000万円! レース参戦の「お金」のリアル (2/2ページ)

ST5クラスであれば2000万円からの参戦も可能

 このようにGT3やGT4、TCRのFIA規定モデルはマシンの購入が可能だが、スーパー耐久の独自の規定で争われるST-1クラスからST-5クラスに関しては、マシンを一から製作しなければならず、マシンを準備するためにはベース車両にプラスして製作コストが必要になってくる。なかでも、ST2からST3以外の車両で争われるST-1クラスは実に幅が広く、ほぼノーマル状態のKTM GTXから大幅な改造を行なっているトヨタGRスープラまで千差万別だ。

 ST-1クラスに参戦している某チームの関係者によれば「チームによってコストの掛け方は違うけれど、マシンは3000万円ぐらいで参戦費用は3000万円から6000万円ぐらいの間だと思う」と語る。

 一方、2001cc〜3500ccまでの四輪駆動車および前輪駆動車を対象とするST2クラスは「自分たちで作るのであれば、製作費として1000万円もあれば競技車両に仕上げることができる。マシンの製作をどこからに依頼すれば2000万円ぐらい。あとはランニングコストとして2000万円ぐらいかかるので年間予算は3000万円〜4000万円かな」とST-2クラスへ参戦するチームの関係者は語る。

 同じく2001cc〜3500ccまでの後輪駆動車で争われるST-3クラスについても、あるチームの代表は「うちはマシンの製作費用が3000万円ぐらいで、ランニングコストは3000万円ぐらい。ほかのチームも年間で5000万円から8000万円ぐらい掛かっていると思います」とのことだ。

 このようにST-1クラス、ST-2クラス、ST-3クラスともに年間で3000万円から6000万円以上の参戦コストを要しているが、1501cc〜2000ccまでの車両を対象にしたST-4クラスは、トヨタ86がメイン車両となっていることから参戦コストはリーズナブル。

 同クラスに参戦するチーム関係者によれば「外注した場合の製作費用は2000万円以上はかかると思いますが、自分たちで作れば500万円もあれば製作できると思います。そのほかにタイヤ代やメカニックの人件費、旅費などの経費を含めたランニングコストが2000万円〜3000万円ぐらい」とのことで、トータルで2500万円前後がST-4クラスの最安ラインと言えるだろう。

 これと同様に1500cc以下の車両を対象にしたST-5クラスはマツダ・ロードスター、マツダ2、マツダ・デミオ、ホンダ・フィットなどのコンパクトスポーツが主力モデルとなっていることから参戦コストもリーズナブルで、同クラスに参戦するチーム関係者は「自分たちで製作するなら500万円もあればマシンは製作できると思います。だいたい1台を製作するのに4名のメカニックで3カ月間を要するから、もし、外注するのなら、それなりの費用がかかってくるでしょうね」と語る。

 さらに「タイヤ代や消耗品を含めて、年間のランニングコストは1200万円ぐらい。トータルで約2000万円ぐらいかかりますが、ST-5クラスなら若手ドライバーもある程度の費用を持ち込めば参戦できるので、キャリアやステップアップのきっかけを作ることができると思います」とのことだ。

 ちなみにSTOが参加を認めたメーカー開発車両のST-Qクラスは、”水素カローラ”でおなじみのカローラH2コンセプトなど、自動車メーカーが先行開発モデルで参戦していることから、その参戦費用は最高峰クラスのST-Xクラスを遥かに凌ぐことだろう。

 このようにスーパー耐久の参戦コストは、クラスに応じて”ピンからキリまで”であり、同じクラスによってもチーム体制によって、そのコストは様々だが、時として予選の少ないプライベーターチームが、豊富な予算をかけて活動するサプライヤー系&ディーラー系チームを凌駕することも珍しくない。この参戦予算の下克上が起きることもスーパー耐久の魅力と言えるだろう。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

愛車
スバル・フォレスター
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登山
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