「アイドリングストップ」非搭載車がいま増加! 効果を考えれば不採用は「疑問」でしかない (2/3ページ)

交通状況によっては燃費が悪化することもある

 では、アイドリングでどれほどの燃料が消費されるのか。

 一般的な事例として、環境省が公開する数値によれば、10分のアイドリングにより乗用車で0.14リッター(140cc)を消費し、二酸化炭素量(CO2)排出量は炭素換算で90gになるとのことだ。

 それを基にすれば、18分ほどアイドリングストップした場合、お茶や牛乳など飲料パック(250ml)ほどの燃料を使わずに済むことになる。

 一方、エンジンを再始動するときに消費する燃料はアイドリングより多く、5秒程度で再始動するとかえって消費が多くなるとされる。

 現在カタログ表記に使われているWLTCの市街地モードは、600秒(10分)間模擬される間に2度停車する。しかし、都市で実際にクルマを運転する場合、信号機が多い場所や信号の連携がよくない道では何度も赤信号で停車することがあり、混雑具合によっては短い区間で信号待ちを2~3回することもある。そうなると、WLTCの市街地モードより停車回数は増え、停車時間も長くなる。

 国土交通省の調査によれば、首都圏の平均速度は時速24kmで、ことに都心は時速16kmとマラソン選手より遅い移動になる。これは、速度制限が時速40kmの道路であれば、移動時間の半分ほどが停車して経過していることになる。国土交通省の調べによれば、時速20km以下になるとアイドリング時間が増え、約3割燃費が悪化するとのことだ。こうした交通環境では、アイドリングストップの効果が大きくなる。

 それでも、交通の流れがよい郊外に住む人は無駄な装備になるとの声が聞こえてきそうだが、現在は世界的に都市化が進んでいる。国際連合によれば、2030年には世界人口の60%が都市部に住むと推計されている。しかも世界人口そのものが増加の一途をたどっている。すでに都市化が50%を超えているいま、販売される新車がこの先10年以上存続すると考えたら、都市化が進むことを踏まえた環境への影響も考慮すべきだ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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