芸能人の起用が激減! 軽=女性の安直さも消えた! クルマのCMに見えるジェンダーフリーの考え方 (2/2ページ)

ジェンダーフリーを狙っていると考えられる

 現在はというと、みなさんもご存じのとおり、ダイレクトに若い女性へのアピールを狙ったようなCMキャラクターの採用は行なわれていない。スズキがいまでもキャラクターCMが目立つが、人気のスペーシアでは芦田愛菜さんをはじめとしたファミリーを想定しているし、その派生モデルスペーシアギアではお父さん役でムロ ツヨシさんが出演している。ユーザー層の幅広いワゴンRでは前述したように草刈正雄さんと、広瀬すずさんのダブルキャストとなっていた。

 つまり、キャラクターCMは残っているものの、各モデルのイメージに合わせてかなりフレキシブルなものとなっているのである。さらに男性ユーザーも多いハスラーのCMはアニメーションとなっており、ジェンダーフリーを狙っているようにも見える。登録車のソリオでは標準車とカスタム系となるBANDITで異なる内容とキャラクターのCMとなっている。今回のワゴンR スマイルのCMも、その内容は“ワゴンRの派生車種”というアピールを強く感じるので、ワゴンRのCMに出演していた広瀬すずさんをスマイルでも起用することで、派生車種のイメージを強調したかったように伝わってくる。

 昔のような、ダイレクトに女性へのメッセージ性の高いキャラクターの採用を行わないようになったのは、男女平等参画社会の実現といった話もあるのだろうが、軽自動車やコンパクトカーユーザーの多様化というもののほうが大きいようだ。

 いまでも軽自動車ユーザーは女性が多いが、現役子育てファミリーのオンリーワンモデルとしての需要のほか、男性ユーザーも増えており、さらには年金受給世代など、リタイヤやセミリタイヤ層のダウンサイズニーズというものも大きくなっている。つまり、性別だけではなくユーザー年齢も多岐に渡っており、ユーザー層の多様化が進んでいるのである。

 かつてアメリカGM(ゼネラルモーターズ)のビュイックブランドで“アンコール”というコンパクトクロスオーバーSUVがラインアップされていた。そしてこのアンコールがCMキャラクターはいなかったが、明らかに若い女性に特化した宣伝を行っていたが、多様性を重んじるアメリカではかなり違和感のあるものであった。

 ちなみに、アメリカのディーラーで店長などに販売状況を聞くことがあるのだが、その時「どんなひとがよく購入しますか」と聞くと、「そんなことは気にしていない、いろいろなひとが乗っている」とだいたい返答される。ついつい日本と同じように聞いてしまうのだが、真に多様性を重んじる国らしい返答だと、勝手にいつも感心しながら、「またやっちゃった」と後悔している。

 日本も、“軽自動車=女性のクルマ”とか、登録車でもお洒落な内装色で、運転席側のサンバイザーにミラー(バニティミラー)をつけたぐらいの、男性目線での“女性仕様車”が平気で設定されていたころに比べると、自動車の世界だけ見ても多様性が重視されてきたなぁとは感じるようになってきた。ただ、これをさらに推し進めるには、まだまだ日本では社会の多様化というものが足りないように感じるので、さらに進めていくことが必要だと考える。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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