EV普及で起こる「急速充電」渋滞! それでも「バッテリーパック交換式」が採用されないワケ (2/2ページ)

交換バッテリーの最大の問題は作業・保管場所

 次に、バッテリー交換場所も、EVとなれば大きくて重いバッテリーパックになるので、何台分もの置き場所を確保できる広い敷地が必要だ。リフトで上げた車両から電気切れしたバッテリーパックを降ろし、満充電のバッテリーパックを倉庫から搬出して装填する作業場所も確保しなければならない。空いていれば1台ずつ順に作業すればいいが、燃料給油にみられるように、何台も希望者が集まると、やりくりに手間がかかるだろう。

※写真はリフトアップ作業のイメージ

 さらに、電気を使い切ったバッテリーパックを満充電にするには、8割程度までとしても急速充電と同じ時間を要する。それをいくつものバッテリーパックに行うとしたら、交換ステーションの電力使用量が一気に高まる。使った電気代だけでなく、一気に大量の電力を使う上での基本料金を含め高額になる。

 EVが普及すればするほど、事業を運営するうえでの経費が上がっていく可能性があり、はたして事業として成り立っていくだろうか。

 EVのよさは自宅で充電することを基本とし、それによって家庭で支払う程度の電気代で当面の利用に不自由しないことにある。出先でも普通充電ができれば、減った分をある程度補え、その電気代も高額にはならない。

 急速充電は、いわば臨時の充電方法であり、今後、充電口数が高速道路などを中心に増えるにしても、走行するEVすべてが急速充電を必要とするわけではない。

 バッテリー交換を前提とすれば、一か所に集中する可能性もあり、必ずしも合理的ではない。エンジン車の発想は、EVには通用しないのである。

 EVにはEVに最適な利用方法がある。それを活かさなければ、利点を享受できないし、EVはエンジン車と違う価値があるというところに、未来を拓くカギがある。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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