車体切断から心臓マッサージまで! ラリー競技の「陰の功労者」オフィシャルのレスキュー訓練の凄まじさ (2/2ページ)

最新工具やFIA指定の道具を利用して最強のバックアップ体制を確保

 最初に実施された項目が、ドライバー、コドライバーを競技車両から引き出す方法を学ぶためのトレーニングで、競技車両がスペシャルステージでクラッシュし、ドライバーが意識を失っていることを想定したうえでセントラルラリーの大会医師団が具体的な方法を実演。首の固定など重要なポイントを説明した上で、今度は大会のオフィシャルたちが搭乗者の脱出を実践していた。

 次にクラッシュ車両に足を挟まれたドライバーを救出するための方法を豊田市の消防隊員がレクチャー。特殊工具を使用してフロントスクリーン&サイドスクリーンの削除、Aピラー、ロールゲージを切断、さらにドアパネルを切断したうえで、フロント側を引っ張り、搭乗者を救出する一連の作業を実践して見せた。

 そのほか、MOSCOでレスキュー訓練を重ねてきたオフィシャルもFIAで指定されている最新の工具でAピラーやルーフ、ドアパネルなどの切断を実演。ちなみに、WRCの開催をするためには、要救助者をエア圧で固定して運ぶためのストレッチャーなどFIAの指定工具が必須になるようだが、今回のトレーニングで使用された切断および挟んだり、開いたりする工具も1台で250万円するらしい。それでも100トンの力で、Aピラーでもロールゲージでもブチブチと切断したり、ドアパネルをこじ開けたりできるだけに、レスキューの現場では心強いアイテムだと言えるだろう。

 自身もドライバーとして活動するほか、セントラルラリーでは医師団長を務めた青山康氏にレース競技におけるサーキットでのレスキューとラリー競技におけるスペシャルステージのレスキューの違いに尋ねると次のように説明してくれた。

「まず、サーキットと違ってスペシャルステージは山の中なので、レスキュー現場が平坦とは限らない。それに圧倒的な違いは、救急車がクラッシュの現場に到着するのに時間がかかるので、最初に事故現場に接するオフィシャルは、サーキット以上にレスキューの役目を担う必要がでてきます」

 そのため、前述のとおり、ラリー会場では全日本選手権を中心に度々、レスキュー訓練が実施されており、時にドライバー&コドライバーも参加して、心臓マッサージや人工呼吸のやり方がレクチャーされるなど、サーキットを舞台にしたレース競技以上に、大規模なトレーニングが実施されているのである。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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