昨年起きた車両火災は3585件! それなのになぜクルマには消火器が搭載されないのか (2/2ページ)

バスなどには消火器搭載が義務

 じつは、クルマに消火器が不要というわけではない。多くの乗用車には消火器は搭載されていないが、世の中には消火器を積んでいるクルマもある。

 具体的には、乗車定員11名以上の自動車(バス)や幼児専用車、そのほか火薬類や危険物、可燃物、可燃性ガスなどを運送する自動車には、保安基準によって消火器の搭載が義務付けられている。乗合バスをよく見れば、消火器を積んでいることを確認できるだろう。

 そうした車両用消火器については、これまた保安基準によって基準が定められている。

 たとえば火薬類を積んでいる車両においては強化液(炭酸カリウム水溶液)を8リットルL以上充填したもので、強化液を霧状に放射するものなければならないと定められている。可燃性ガスを運送する車両では、リン酸塩類などの充填量3.5kg以上の粉末消火器が適応するとされているなど、運送するものによって適合する消火器の種類が異なる。

 では、家庭用の消火器は車載には向いていないのだろうか。

 一般的に家庭用として普及しているのはABC粉末消火器だろう。ABCというのは火災の種類のことで、Aが木材や衣類が燃える火災、Bはガソリンなど油脂類が燃える火災、Cが電器器具などに起因する火災を意味する。

 前述した車両火災の原因を見ればわかるように、ABC粉末消火器であれば通常の車両火災には対応できる。実際、バスなどに積まれている車載消火器も、その多くはABC粉末消火器となっている。

 家庭用の消火器をクルマに搭載することは不適切ではないといえる。

 ただし、消火器を搭載する場合に守らなければならないのが安全な運行を妨げないようにすることだ。具体的には、ブラケットなどをつかって運転に邪魔にならないよう固定しておかなければならない。安全のためだからといって床に転がしておくような積み方をしていると保安基準を守っていないことになってしまう。

 また、本気で消火器を車載しようというのであれば炭酸ガス(二酸化炭素)消火器の検討をおすすめしたい。炭酸ガスによって窒息消火するため粉末による汚損がないのがメリットで、とくに車内の消火には最適といえる。

 バスなど消火器搭載が義務付けられている車両の場合、炭酸ガス充填量2.2kg以上の消火器でなければ保安基準を満たさないが、乗用車が自主的に積むのであれば充填量が2.2kgに満たなくても問題はないので、コンパクトなタイプを選ぶと安全な位置に搭載しやすいだろう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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