市販車なのに最高速度430km/h超! スーパーカーを超えるハイパーカーのブガッティ・ヴェイロンとは (2/2ページ)

スーパーカーの最高速バトルに終止符を打つ400km/h超えを記録

 EB18/4というネーミングからも想像できるように、VWは当初、ヴェイロンのミッドに3基の直列6気筒エンジンを60度ずつのバンク角で組み合わせた、6.3リッター仕様のW型18気筒エンジンを搭載する計画だった。だが、これはやはり吸排気システムの設計上、これにはさまざまな難点があった。

 そのために開発陣が提案したのが、8リッター仕様のW型16気筒で、これは狭角V型8気筒エンジンを2基組み合わせ、さらにクワッドターボ、すなわち4基のターボによる過給を行うというものだった。ちなみにこのW型エンジンはモジュラー型として設計され、W型12気筒、W型8気筒と、さまざまなサイズで一時VW車のアイコンとなったことは記憶に新しい。現在でもベントレーがコンチネンタルGT、フライングスパー、ベンテイガに搭載するW型12気筒エンジンは、その流れを汲むものである。

 プロダクション仕様のヴェイロンが発表されたのは、2003年のフランクフルト・ショーでのことだった。1001馬力の最高出力と406km/hの最高速というスペックやパフォーマンスは、もちろん当時のスーパースポーツの世界においては頂点を極めたもの。ただし、実際のデリバリーが開始されるまでには、ブガッティはスタビリティの改善をメインにかなりの時間を擁しており、2005年の東京モーターショーでは再び、その正式な発表が行われたほか、生産台数を300台に限定すること(さらに生産期間も限定された)、日本には正規輸入代理店を通じて15台が割り当てられることなどが明らかにされた。

 そしてヴェイロンは、それからさまざまなモデルを派生していく。それらはいずれもワンオフモデルや、ほかの高級ブランドとのコラボモデルといったものだったが、2008年8月には、タルガトップスタイルの着脱式ルーフを備える「グランスポーツ」が正式にヴェイロンのラインナップに加わることになった。

 このグランスポーツは、300台のクーペとは別に、150台を生産される予定で発表されたもの。一見ルーフをオープン可能にしただけのモデルにも思えるが、実際にはモノコックタブなど、多くのパートでオープン化に対応する改善策が施された。

 パフォーマンス面での大きな進化は、2010年に発表された「スーパースポーツ」で起きた。これは大型のターボやインタークーラーを装着することで、最高出力を1200馬力に向上させたもの。最高速も431.072km/hを記録するなど、この30台の限定車は、じつに刺激的だった。また、ブガッティはオープン仕様のグランスポーツでも、同様に1200馬力ユニットを搭載した「ヴィテス」を製作。

 後継車のシロンが誕生するまでに、ブガッティからは、じつにさまざまな仕様のヴェイロンが生み出され、カスタマーを満足させたのである。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

新着情報