「軽く切れればいい」ってもんじゃない! パワステの感触がクルマによって異なるワケ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■パワーステアリングの詳細を解説

■今ではほとんどのクルマに採用されている機構だ

■車種ごとにパワステの感触が違うのにはクルマのキャラが関係している

クルマによってステアリングフィールが違う理由とは

 クルマの各操作系、たとえばステアリングホイール、アクセル/ブレーキ/クラッチのペダル類、シフトレバーやシフトセレクターといったドライバーインターフェースの部分は、車種ごとに操作感が違っている。操作感覚としては、重い/軽い、滑らか/渋い、手応え感の有無といった表現になるが、とくにステアリングの場合はこうした差異が大きく感じられる個所だ。こうした操作感の違いがなぜ生じるのか、その理由を考えてみよう。

 ステアリング機構は、ステアリングホイールを回して前輪に切れ角をつける装置で、大きく回せばその分だけ前輪の切れ角(舵角)は大きくなる。この操舵量を切れ角に変換するのがステアリングギヤボックスだが、ギヤボックスというだけあって減速比が設定されている。現在の自動車は、ほとんどのモデルにパワーアシスト(パワーステアリング)機構が装備されているが、かつては、当然ながらノンパワーアシスト、つまり人力のみでステアリングを操作する方式が一般的だった。

 つまり、ステアリングを回すにはある程度の力が必要になってくるわけだが、ここで問題となるのが操舵量と切れ角の関係だ。通常の運転で、両手を持ち替えずにリラックス、安定してステアリングホーイルを保持できるのは左右60〜70度の範囲内、一時的に左右の手を交差させる場合は左右135度の範囲内と考えてよいだろう。

 この操舵量を前提に、切れ角(ステアリングギヤボックスの減速比)を設定することになるのだが、車重750kgのクルマと車重1500kgのクルマとでは、同じ減速比であっても操舵感(ステアリングの重さ)はかなり違ったものになる。当然ながら、ステアリングの重さは車重に比例することになり、大型重量級のクルマでは重くなってしまう。このため、パワーステアリングが普及していなかった時代には、重量のあるクルマは操舵力を軽減させるため、ギヤボックスの減速比を低く設定して対処していた。そして、この対応策は、操舵力は軽減されるが、向きを変えるためにたくさんステアリングホイールを回さなければいけない、という不都合が生じていた。

 一方で、ステアリングホイールは、前輪から伝わる路面情報や車両挙動を感じ取るドライバーインターフェースとして重要視され、スポーツタイプのモデルでは、より直接的な感触が得られる高い減速比のステアリングギアボックスを好んで採用する傾向が歴史的に見られていた。少ない操舵量で機敏に向きを変えることができ、よりダイレクトな路面情報や車両挙動をつかみ取ることができた。しかし、減速比が高い分だけステアリングは重くなり、より大きな操舵力が必要となるデメリットが生じていた。

 簡単に言ってしまえば、鋭く反応するが操舵力の重いステアリング、もしくは反応は穏やかだが操舵力が軽いステアリングという分け方になるが、こうした互いの短所を補うかたちで実用化されたのが、油圧を利用したパワーアシスト機構、パワーステアリングである。このパワーステアリング機構の実用化により、少ない操舵量で大きな切り角が得られるようになり(減速比の高いステアリングギヤボックスの採用が可能となり)、クイックな特性を持ちながら適度な重さの操舵力が実現可能となったわけである。


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