天邪鬼なワケじゃない! レーシングドライバーが「今年のクルマ」の大賞車ノートに点を入れずアウトランダーに10点を投じたワケ (2/2ページ)

最高点を配したのは三菱アウトランダーPHEV!

 話が脱線してしまいましたが、そんな訳もあり僕が今回最高点を配したのは三菱アウトランダーPHEVでした。アウトランダーPHEVは先代が2012年に登場しています。その時は「自動車界のノーベル賞」と評価しました。今では世界中の多くの自動車メーカーが三菱方式とも言えるPHEVを開発し採用していますが、制御面での完成度も含めてアウトランダーPHEVのシステムは突出した完成度にあるのです。

 単に電動モーターとガソリンエンジンの効率的な制御に留まらず、悪路でのトラクション性能確保、ハンドリング面の秀逸さ、それを引き出すS-AWCの熟成度も高く、最高点を配点しました。室内のデザインや装備、質感も圧倒的に高まり、もちろん4ドアとして素晴らしい後席居住性と装備を備えている。全席シートヒーターは今やSUV車必須装備と言えるし、後席リクライニング機構もなくてはなりません。後席エアコン吹き出し口に後席ドア窓にサンシェードも備えられるなどBMW7シリーズに勝るとも劣らない仕上がりです。今回のモデルではさらに3列シート車もラインアップされ、今後は3列シートヒーターも訴えかけていかなければならないでしょう。

 次点にはシボレー・コルベットに高得点を配点しました。新型となったコルベットはじつに素晴らしい。ミドシップ化については賛否両論あるようですが、これほど高い完成度で仕上げられているなら文句なし。現代では他に見当たらないようなOHVエンジンはV8バンクの中央に1本のカムシャフトを配し、両バンクのバルブを稼働させる。OHVは商用車など低速走行でコストダウン要求の大きなモデルに採用されることが多い実用向きエンジン形式と思われていたが、コルベットはそんな考え方を一蹴したのです。1本カムシャフトは両バンクのシリンダーヘッドを簡略化し、重量と部品点数を軽減。重心の低さにも貢献させている。さらにドライサンプ化することでエンジンはより低い位置に搭載されレーシングカーとしても成立しそうな低重心を実現しているのです。

 それでいて実用性を犠牲にしていない。ホンダが現行のNSXやS660をリリースした時、多くの期待と高い評価の声が聞かれたが、COTYで本賞を受賞することはできなかった。その一因であったのは実用性の低さに違いありません。NSXもS660もミドシップであることを口実にカップホルダーもちょっとした物入れも備えていない。旅行カバンを積み込んでドライブすることができないスポーツカーに需要があるとは思えない。

 だがコルベットにはしっかりとしたトランクスペースが備わっています。フロントフード下に大容量のトランクがあり、リヤエンドにはさらに大きなトランクがある。ここは取り外し可能なルーフの収納スペースでもあるが、普段は大きなトランクとして活用できる。走り、スタイル、サウンド、価格と優れ、加えて実用性も高ければ評価しない理由はないのです。

 メルセデス・ベンツCクラスにも高得点を配点しました。その最大の理由は「走りの良さ」でした。後輪操舵システムを備えたモデルはコーナーで完璧なライントレース性を示し、今後は後輪操舵無しではハンドリングは語れなくなると思わせるほどの完成度でした。しかし全車に標準装備されていないことから、コルベットに次ぐ配点になりました。

 2021-2022 COTYは僕のなかでこのように完結したのでした。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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