軽量化のためボディ外板に「樹脂」を使うクルマも多数! それでも「ボンネット」が金属製なワケ (2/2ページ)

ボンネットフードには耐熱性・耐候性・耐久性が必要

 しかし、樹脂はこれまでボンネットフードに使われてきたことはない。それは、耐熱性に限界があるからだ。

 身近な家庭用品などで見かける樹脂素材の多くは、耐熱温度が100℃前後で、高熱に耐える樹脂でも200℃ほどだ。そして、やがて融けてしまう。ボンネットフードの下にはエンジンが搭載されており、車体の他の部分より高温になりやすい。したがって、ボンネットフードへの樹脂の利用は、モータースポーツなど特殊な利用以外では耐久性に課題が残る。

 また、耐候性といって気象や気候による劣化の課題も考えられる。太陽光や紫外線、酸性雨、温度差などによって、変色やひび割れを起こす懸念が樹脂にはある。以前から前後バンパーには外観の造形を活かす樹脂が使われているが、ボンネットフードに比べてひび割れや塗装の変色などを起こしやすい傾向がある。さらに、エンジンの熱の影響が加わり、温度差が大きくなれば、耐久性はさらに落ちやすくなるだろう。

 それでもモータースポーツ用であれば、耐久性や耐候性より軽さが何より重視されるので、安価に軽量化できる樹脂の利用は十分に考えられる。また、塗装の重さも軽減したいため、粘着性のシートを使った配色を行うこともあり、塗装の劣化は気にせずに済む。変形やひび割れが起これば、交換すればよいといった割り切りもできる。

 露天の駐車場で保管され、10~20年も利用されることもある量産車では、余分の補修費用を負担せずに済むようにとの視点を含め、車体外板に使われる材料が選ばれることになる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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