セダン離れが進む国内市場において孤軍奮闘! トヨタがラインアップするセダンを深掘り解説 (2/2ページ)

■いま購入できるトヨタのセダン

・カローラ(カローラアクシオ)

 ボディサイズ:全長4495mm×全幅1745mm×全高1435mm

 初代の登場から50年以上経つトヨタの基幹車種カローラ。現在販売されている現行モデルは2019年に登場した12代目となります。また12代目とともに、先代モデルのセダン仕様「カローラアクシオ」も引き続きラインアップされています。

 現行モデルは3ナンバーサイズとなりますが、グローバルモデルと比べ国内での使用を考慮したボディサイズを採用。海外で販売されているカローラより全長で135mm、全幅で45mm短くなりました。ただ、少なからず需要がある5ナンバーサイズの縛りを超えてしまったことは事実。先代モデルとなった5ナンバーサイズのカローラアクシオが現在も販売されているのは、それらの需要を満たすためです。

 歴代のカローラといえばパワーユニットやボディタイプが多彩であることが特徴ですが、現行モデルも幅広いモデルを用意。ボディタイプはセダンに加え、ステーションワゴンのツーリング、ハッチバックのカローラスポーツ、さらに2021年にはシリーズ初となるSUVモデルのカローラクロスが加わりました。

 またセダンに用意されているパワーユニットは、1.2L直4ターボ、1.8L直4、1.8L直4+モーターのハイブリッドと3種類が備わっています。

 3つのパワーユニットの位置付けですが、1.8Lエンジンがエントリーモデルをはじめとする主力グレード向け、ハイブリッドは燃費を重視するユーザー向け、そして1.2Lターボエンジン搭載車は6速MT仕様も用意されるスポーティモデルとなります。

・カムリ

 ボディサイズ:全長4885mm×全幅1840mm×全高1445mm

 北米市場においてベストセラー乗用車の地位を長年維持しているカムリ。現行モデルは初代から数えて10代目となります。

 4.8mを超える全長など主要マーケットとなるアメリカで好まれるボディサイズを誇るため、室内はゆとりありまくりの広さを実現。またラゲッジもHVバッテリーを小型化するなどにより524Lと広大なサイズを有しています。

「センシュアル-スマート」、つまり官能的で知的であることをテーマにデザインされたエクステリアは、スタイリッシュかつ高級感を備えたもの。またインテリアも視認性の向上をテーマにデザインされるなどの機能性に力を入れたのはもちろん上質さも加わりました。

 搭載されるパワーユニットは海外仕様こそガソリンエンジンがラインナップされているものの、国内仕様は2.5Lエンジン+モーター(前後2基)のハイブリッドのみ。ただ、システム合計の最高出力は300ps以上のパワーを有しています。

 グレードもシンプルでエントリーモデルのX、そしてG(+Gレザーパッケージ)、WS(+WSレザーパッケージ)の5つ。ベーシックなXでさえ、先進安全装備をはじめとする必要な装備は充実していることも特徴といえるでしょう。

・クラウン

 ボディサイズ:全長4910mm×全幅1800mm×全高1455mm

 近年、「ブランドが消滅する」「次期モデルはセダンではなくSUVに」などなにかと話題を集めるクラウン。そこまで話題を集めるのは、長年、トヨタのフラッグシップモデルとして君臨し続けてきたからのことでしょう。

 現在販売されているのは15代目となるモデルで、長寿ブランドの宿命とも言える「ユーザーの高齢化」から脱却するためブランドの再構築を目指し開発されました。

 そんなテーマを一番具現化したのがエクステリアデザイン。全高を低く見えるようピラーの傾斜を寝かせ、クラウンらしからぬ6ライトウインドウを採用するなど流麗なサイドシルエットが目をひきます。

 また、現行モデルは従来用意されていたアスリートやロイヤル、マジェスタをすべて統合したモデルとなっています。そのため、最高出力245psを発揮する2.0L直4直噴ターボなどを搭載したスポーツ仕様のRSをはじめ、豪華仕様のGとエグゼクティブ仕様のG-エグゼクティブ、ベースモデルのSなど多彩なグレードを用意。

 パワーユニットも前期したターボエンジンに加え、2.5L直4エンジン+モーターのハイブリッド、3.5LV6エンジン+モーターのハイブリッドの3タイプを用意しました。

 トヨタが誇るフラッグシップとして見た目やインテリアの質感はもちろん、走りや乗り心地、ハンドリングなども高いレベルで備わっている高級セダンだと好評を博しています。

・センチュリー

 ボディサイズ:全長5335mm×全幅1930mm×全高1505mm

 初代、2代目とショーファードリブン専用車として登場してきたセンチュリー。3代目となる現行モデルは2018年にデビューしています。

 現行モデルは先代よりひと回り大きなボディを身につけた反面、2代目に搭載されていたV12気筒エンジンは廃止。5.0LV8+モーターのハイブリッド専用車となりました。

 とはいえ、システム最高出力は431psと先代に搭載されていたV12気筒エンジンの280psを大きく上回っています。またハイブリッド車となったことで、この手のクルマが重視する静粛性は向上しました。現在では国産車唯一のショーファーカーとなったセンチュリーは、超高級車にふさわしい装備や技術がてんこ盛りなのは言うまでもありません。

 しかも、他のセダンとは違うこだわりも随所に施されています。4色用意されたボディーカラーは洗車などによる小さな傷を自己修復するセルフリストアリングコートを全色に採用。また、エターナルブラック(神威)は黒染料が入ったカラーコートを7コート5ベイク、水研ぎを経た後、最後にバフ掛けし鏡面仕上げを行うほど塗装にもこだわりが施されています。

 車両価格は2008万円と国産車としては破格の価格ではありますが、一概に高いと感じないのは最高級車として随所に施されたこだわりがなせることなのでしょう。

・MIRAI

 ボディサイズ:全長4975mm×全幅1885mm×全高1470mm

 数あるトヨタがラインアップするセダンの中でも、異質の存在といえるのがMIRAI。パワートレーンには「TFCS」と名付けられたフューエルシステムを搭載するFCV(燃料電池)なのです。

 改めてFCVを説明すると、水素を燃料とした電気自動車を意味します。水素と酸素の化学反応によりが作られるのですが、その際に余った電子を電気エネルギーとして取り出し、その電気を使ってモーターを駆動させ走行するという仕組みとなります。

 現行モデルは2代目となりますが、2014年に発表された初代は世界初の量産型FCVとなりました。先代モデルと大きく違っているのがプラットフォームで、初代は前輪駆動車がベースとなっていましたが、現行モデルのプラットフォームは後輪駆動車を元にしたものへと変更。

 またFCVの肝となる発電装置「FCスタック」を前席下部からフロントコンパートメントへ移動したことも大きな違いといえるでしょう。

 現状、FCVを日常的に乗りこなすには水素ステーションなどのインフラがまだ整ってはいないですが、MIRAIは世界でもっとも進んだFCVであることは間違いありません。

■一世を風靡したトヨタのセダン

 第二次世界大戦の1940年代後半から乗用車の生産に力を入れていったトヨタ。トラックと共有のシャシーを用いS型エンジンを搭載した小型乗用車の販売を経て、1953年に販売されたトヨペット・スーパーが3ボックスセダンらしい初のモデルとなります。

 その後、1955年に発売を開始したクラウン、1957年に登場したトヨペット・コロナ、さらに1966年にカローラ(デビュー時は2ドアのみ)がデビューしていきました。

 現在までに数えきれないほどのセダンを世に送り出してきたトヨタですが、その中でもとくに記憶に残る車種をピックアップしていきましょう。

・5代目マークII(1984〜1997年)

 姉妹車のクレスタ、チェイサーとともに「ハイソカー」とのジャンルを構築したのがマークII。後継モデルとなる6代目も大きな人気を博しましたが、とくに5代目は、日本にハイソカーブームを巻き起こすきっかけとなりました。

・初代カリーナED(1985〜1998年)

 4代目セリカのプラットフォームをベースに1310mmとセダンとしてはありえないほどの低い全高を備え1984年にデビュー。その当時、国内で流行したピラーレスハードトップを備えスタイリッシュなデザインを身に纏ったことで大ヒットとなりました。

・初代セルシオ(1989〜2006年)

 バブル景気真っ只中に登場したトヨタの最高級セダン。騒音と振動の原因となるノイズを徹底して抑える「源流対策」や多くの新機構&新技術を搭載したことで世界的にも注目されるセダンとして高い注目を集めた1台です。

■日本のセダン離れはトヨタでも解決不可能?

 と、トヨタがラインアップするセダンについて紹介してきたわけですが、将来的にどうなるかは不透明。事実、現在販売されている国産セダンの多くが廃止されたり、グレードの縮小が進んでいます。

 それでも海外メーカーが国内で販売するセダンは少なくありません。つまり、セダンを選択するユーザーは必ずしも少なくないわけです。

 ただ、国産セダン人気が復活するには多くの課題が待ち受けているのも事実。次期クラウンはSUV風セダンになるとの一部報道もあるように、いままでのセダンとは違うブランディングが必要となるでしょう。


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