AMGの「本気」がココにあった! F1と「一緒に走る」ために生み出された市販車「ブラックシリーズ」が凄まじすぎる (1/2ページ)

この記事をまとめると

■「AMG」には「F1と走れる」ことをコンセプトにしたハイパフォーマンスモデルがあった

■ブラックシリーズと呼ばれ、走りに特化したスペシャルな仕様とされていた

■ニュルブルクリンクでFR最速の座を手に入れた経歴もあった

「F1と走れる」という夢のようなコンセプトのAMG

 いまどきAMGのことを「アーマーゲー」と呼ぶのって、1周まわって昭和の成金みたいでカッコよくありませんかね。Wikiだと漫画「シャコタン☆ブギ」でそう呼んでたってことですが、時代的にマッチしないので、個人的には1980年代初頭に自動車雑誌のル・ボラン誌が広めたような気がしています。

 こうしたカン違いは日本だけでなく世界各国で見られるのですが、典型的なのはF1レースのセーフティカー。なにしろ「F1マシンすら追い越せないAMG」ですから、中東のリッチな国あたりでは「パねぇ!」って思いこむのでしょう。レースが終わった月曜には必ず数台の注文が入るそうです。

 これに気を良くしたわけではなさそうですが、AMGのブラックシリーズはこのF1と一緒にサーキットを走れるマシンという設定です。

 サラっと書いてますけど、フォーミュラマシンのコーナリングやエンジンパフォーマンスに「乗用車」が追いつくのは至難の業。サーキット専用マシン、つまりレーシングカーに仕立てたとしても「乗用車」ベースの限界はそれほど高くありません。ちょっと前のDTMマシンのように、スタイリングこそ市販車のカタチながら、中身はカーボンモノコックでエンジン搭載位置からシャシージオメトリまで作り変えているなら話は変わってきますが、いくらなんでもDTM並みのクルマでビバリーヒルズは走れませんからね。

 ブラックシリーズのすごいところは、やはりDTMマシンに準ずるパフォーマンスながら、一般道も安穏に走ることができるフレキシビリティといっていいでしょう。もちろんハイパフォーマンス&快適性の両立は普通のAMGパッケージでも手に入るものですが、ブラックシリーズはそのパフォーマンスを「パねぇ!」と驚くまで研ぎ澄ましたものと考えるべきでしょう。

 とはいえAMGにとってはそれほど難しいことではなかったはず。むしろ、息をするかのように自然と作れたに違いありません。なにしろAMGのスタートはレーシングカー作りであって、スペシャル・コンプリート・チューニングカー(現在のAMGパッケージに似通っていますね)はあくまでファクトリーを存続させるためのビジネスだったからです。創設者のひとり、ハンス・ヴェルナー・アウフレヒトは優れたレーシングカーエンジニアであり、AMGを離れてからつくったHWA AGだってF1やDTMといったレースにガブリ寄りもいいところ。

 アウフレヒトは「最良のチューニングは排気量アップ」を貫くエンジニアですから、ブラックシリーズも基本的に排気量アップと軽量化、そして「乗用車」のネガを極力つぶすことに終始しています。

 たとえば、最初のブラックシリーズ、2006年に発売されたSLK55 AMG ブラックシリーズは排気量こそ5.5リッターのままでしたが、エキゾースト、エアインテークなどを最適化し、マネジメントプログラムをちょいちょいとやって360馬力から400馬力に。これにはAMGパフォーマンススタジオと呼ばれるエンジニアが念入りにエンジンを組み立てるセクションの貢献も大きいことでしょう。だいたい1気筒当たり600ccを超える燃焼室ですから、ピストンやコンロッドを精査、バランス取りするだけでも軽く10馬力はアップするはず。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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