勝手に交通整理オジサン! セルフ一方通行! インドネシア名物の「カオス交通」は消えゆく運命か?

この記事をまとめると

■インドネシアの交通状況は近年整ってきている

■しかし、駅前では以前の雑然とした交通状況が見られる

■今後はこうした光景も見られなくなる

近年の開発で交通状況も改善されてきた

 日本からのODA(政府開発援助)もあり、高速道路が整備され、GIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オートショー)の会場周辺は振興開発地域で、周囲は整備され日系ショッピングモールや、日本のディベロッパーが建築した高級マンションが建ち並び、ジャカルタ市内中心部も近代的なビルと広く整備された道路が続いており、何か物足りないものがあるなと感じていた。そう、東南アジアならではの“カオス”ともいうべき、混とんとした道路風景がなかなか見当たらないのである。

 そう思っていたら、ある法則に気がついた。いかにもアジアの風景らしい、クルマ、バイク、人が入り交じるカオス風景を見たいならば“駅前にあり”なのである。

 その鉄道とは“KRLジャボタベック”などの愛称でも親しまれた、ジャカルタ都市圏を網羅しているKRLコミューターラインが運行する通勤電車網のこと。かつて日本で活躍していたJR埼京線や南武線などのほか、営団地下鉄や都営地下鉄の車両が使われていることでも有名。車両はやや古いが冷房もついた日本の車両で、駅舎やホームも近代的なものがほとんどなのだが、訪れた駅の周囲はせいぜい片側一車線程度の狭い道路がクネクネし、その沿線に民家や商店、飲食店が建ち並ぶ、まさに“これぞアジア”と呼ぶ風景になっている。さらに片側一車線といってもセンターラインもないので、“片側一車線程度”の幅の交互通行道路となるのだが、気がつくと同一方向に向かうクルマが道幅いっぱいに広がり、対向車が通れない事態になっていたりもする。そうなると、どこからともなく“交通整理”を買って出る“オジさん”が登場。オジさんはドライバー有志からチップをもらったりするようだ。

 駅へ向かう途中に、“なんちゃってラウンドアバウト”みたいなものがあったのだが、ほぼ機能不全しており、まさにクルマが“すし詰め”状態となる大パニック状態となっていた。乗っていたライドシェアのドライバーは見事にはまり脱出できないでいた。

 日本でも踏切渋滞というものがあるが、体験した限りではジャカルタ及び近郊の踏切渋滞は日本のテレビニュースで紹介される、かなりひどい東京などの踏切渋滞を数十倍ほどひどくしたようなものとなっていた。いったん踏切が閉まると開くまでの時間も長く、そうなると前述したような“セルフ一方通行”のような事態が起きてしまうようだ。

 通勤電車網の駅の中に、東京でいえば“上野駅”のような“コタ駅”という発着ターミナル駅があるのだが、ターミナル駅といえどもかつてはかなり混とんとしていた。駅舎に沿って乗り合い小型バスともいえる“アンコット”や、三輪(いまは四輪もあり)タクシーのバジャイがたくさん客待ちの長い列を作り、歩道(のようなスペース)には露店が軒を連ねていた。駅前から道路を渡るのも、信号はもちろん、横断歩道もなく、歩行者が渡ろうとしてもバイクやクルマは間違いなく停まることはないので、走ってくるクルマやバイクの合間を縫って歩行者は道路を渡っていた(インドネシアだけでなく、東南アジアでは道路を渡る方法として一般的。けっして走って渡ってはダメで、クルマやバイクの流れを見ながらゆっくりと渡りきるのがコツ)。

 しかし今回コタ駅に行くと、駅前に新たな広場が整備されつつあり、駅前にいたアンコットやバジャイは駅前からいなくなっていた。

 地元の人は道路が日本並みに整備されていくのを望んでいるだろうが、筆者としてはそうなっていくのは寂しい。しかし、これは用事があって時々短期間で訪れる“ヨソ者”のエゴだと言われても仕方ないのだが、カオス的な風景が失われていくのはやはり物足りない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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