【試乗】完成度の高かったアイスガード6を軽々超えた! ヨコハマの新作スタッドレスタイヤ「アイスガード7」を中谷明彦が冬の北海道で徹底チェック (2/3ページ)

雪に効くだけでなく扱いやすい性能も兼ね備える

 次に圧雪路の屋外スラロームコースで性能比較をしてみる。こちらのコースで用意されたのは同じくプリウスでタイヤサイズも同じである。四輪駆動ということもあり、発進においては問題なく走行可能だが、とくにスリックタイヤを装着したモデルではスラロームは厳しいだろうという予測だったが、意外にもスリックタイヤのプリウスも右左へとラインを変更してスラロームをクリアすることが出来た。ただ、操舵初期の応答性はほとんどなく、操舵輪が大きな操舵角を得たときにタイヤのショルダー部がエッジ効果を発揮して急にひっかかるようにまわるといったような旋回フィーリングであった。

 アイスガード6はもちろん、すでに実績のあるタイヤでありスムースで正確なライントレース性なども完成度の高さを示したが、現行アイスガード7はさらにそれを熟成させ、ステアリングの手応えや旋回時のグリップ感なども得られるほどに性能が高まっている。確実なライントレース性や操作性、そしてブレーキ、発進の安心感などを総合的に評価すれば、最新のアイスガード7はかなり高評価が得られると言える。時速40キロのスラロームと60キロのスラロームを試したが、車速が上がるとさらにその格差は広がり、アイスガード7がもっとも高い性能で仕上がっていることが確認できた。

 次に流行のミニバンでアイスガード7と6の比較を行う。用意されたのはトヨタのヴェルファイア。フルサイズのワンボックスカーでE-Fourの四輪駆動を採用している。装着されたタイヤは235/50R18という非常にスポーティな外観を持つ幅広で低扁平なサイズのタイヤである。

 発進は四輪駆動ゆえアイスガード7、6ともにスムースで確実な加速が得られるが、ステアリングの切り始めの応答性の高さ、そして最大舵角に達した時の路面をつかむ感覚が、アイスガード7ではより手応えとしてドライバーが感じ取ることができ、それは安心感につながるものだった。スラロームを行っていくと、だんだんヨーダンピングと言ってリヤが流れ出す傾向が強くなっていくが、そんな場面でもアイスガード7はヨーの立ち上がりが比較的穏やかで、リヤの流れ出しがゆっくりなのでドライバーが感知しやすく、それをステアリング操作やアクセルワークなどによって収斂させることも容易に行える。

 アイスガード6では流れ出しスピードが速く、それを抑え込むにはいささかスキルの高いドライビングテクニックが求められるため、より万人受けのタイヤとしてアイスガード7は安心感を手に入れていると言えるだろう。

 その次は同じく雪上スラロームだが、最新のトヨタGR86、FRの二輪駆動車で6速マニュアルトランスミッションを持つ仕様の車両が用意されている。装着タイヤは215/45R17で低扁平のスポーティタイヤサイズである。二輪駆動FRゆえ、発進時にトラクションはかかりにくく、容易にタイヤが空転を起こす。トラクションコントロールをオンにしておいても介入が入るので四輪駆動車のような鋭い加速感は得られないが、GR86が装備しているトラックモードを選択すれば、そのスリップと駆動力のバランスが適度に保たれ、スポーティさを維持しながらも確実にクルマを前へ進めることができた。

 スラローム区間に入るとフロントのターンインの応答性が良く、それに伴いリヤがスムースに流れ出していく。そこでアクセルワークによりリヤのスライドをコントロールしながらパイロンを右左とリズムよく駆け抜けていくことができる。そのときの運動性能、コントロール性、パワーオンオフによるグリップ変化の扱いやすさなど、FRのスポーティカーを雪上で楽しく走らせることに、アイスガード7は非常にマッチングよく応えてくれている。

 いわゆるドリフト走行的な楽しみも存分に行え、雪上ゆえタイヤの摩耗が抑えられ、またクルマへの負担も少ないと考えられることから、こうしたクローズドされたスラローム会場があれば、ドリフト走行の有効なドライビングトレーニングができるだろうと思わせられた。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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