すぐそこの場所でもナビ使用! 支払い計算に電卓! デジタル化の波で「若手タクシードライバー」からプロ感が消えた (2/2ページ)

タクシー業界にも多彩なデジタルツールが導入されている

 最近四年制大学を卒業してそのままタクシードライバーになる人が目立っているようだ。男女の別なく、腕一本で平等に稼げるタクシードライバーに魅力を感じているのかもしれない。さらに大手などを中心に、配車アプリが普及しており、コロナ禍前ほどではないものの、アプリ配車を追いかけていれば、経験年次が浅くても、稼ぎの上でベテランと大きく差がつくことがなくなってきているとも聞く。

 東京のような、流し営業がメインの地域のタクシーでは、各ドライバーが時間ごとにお客がいそうなところへ流す場所を変えるなどのルーティーンを持っていたり、その時の状況に応じて勘を頼りに流す場所を変えるなど、経験を積んで稼ぎ方を覚えるといったことが多かった。しかも、その勘が大当たりして万収(万円単位の長距離利用)のお客をゲットできれば、深夜でも眠気を忘れて運転してしまうほど嬉しい、そんな気持ちになるのが楽しみでタクシードライバーをやっている人も多いと聞いたが、若い世代のドライバーは少々その辺りとは違う気持ちで乗務しているようにも見える。

 かつては、ドライバーになるには人生経験の浅い若い人よりも、人生を知り尽くした年配の人のほうが適した職業ともいわれていた。しかし、タクシー営業も多彩なデジタルツールが導入され、配車アプリの導入で経験がそこまで重んじられることもなくなり、ドライバーをはじめる敷居は下がっている。ただし、新人時代から配車アプリに振り回されれば、アプリで呼ばれ、目的地へ行くだけとなるので、配車アプリを活用していない事業者へ転職したときはかなり苦労するのではないかとの話も聞いている。

 先日、自動運転バスの取材をした。自動運転バスというと、たいていは車両がBEV(バッテリー電気自動車)となり、見た目も珍しく、無人で走るという物珍しさばかりがメディアの報道では目立っている。しかし、実際は完全無人運転ではなく、オペレーターが乗車している。一般的なバスドライバーを求人する時には、大型二種免許が必要など、採用する敷居が高いのだが、自動運転バスではオペレーターとなるので、採用時の敷居が低くなる(二種免許は不要)。地域に自動運転バス運行に関する新たな雇用を生み出すと同時に、路線維持も容易になり、路線廃止も防ぐことができることなどの導入メリットがあるといった話を聞いた。

 配車アプリの導入や、安全・安心運行するためのデジタルデバイスが運行管理に多用されるようになり、タクシー業界に経験のない若い世代が入りやすくなっていることは間違いない。今後タクシーでも自動運転化というものは進んでいくだろう。しかし、中国などで始まっている、完全無人タクシーが常態化するのはまだまだ先となりそうで、日本では当面はオペレーターが乗車することになるだろう。ドライバーからオペレーターというものになれば、さらに若手の積極的な雇用が進むかもしれない。

 無人運行というと、“それまでの雇用が失われる”などネガティブな面が注目されることもあるが、経験や特定技術、国家資格を必要としない新たな雇用を生み出し、ドライバー不足解消への効果も期待でき、利用者のメリットも高まるというもの。ちょっと不安に思える若手タクシードライバーと出会い、デジタル音痴な筆者が、デジタルツールの導入は、いまの便利さを守るためにも必要なんだと強く感じた。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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