新型シビック・タイプR専用の製造スポットも
新型シビック・タイプRは車体サイドのパネルデザインが特徴的だ。とくにリヤホイールハウスまわりがボリューミーでグラマラスなオーバーフェンダー形状となっていて、どのように加工するのか興味があった。だが実際にはシビックの通常モデルと同様にプレス機械で形成される。ただ金型の配置とプレス時に微小な位置変更を加えることで、効率良くあの造形美を製造することが出来ているという。プレスされたボディパネルはすでに美しい形状で引き出されてくるが、その表面を熟練した作業員が手でなでるように触診し、微妙な傷や変形などの確認を行っていた。
ボンネットフードは今回アルミ素材であることに加え放熱グリルとしての穴あけ加工が必要で、埼玉製作所の狭山工場で加工され寄居工場に納品され製造ラインに送られるのだ。
見所はサスペンションの製造ラインだ。新型シビック・タイプRのフロントサスペンションはダブルアクシスストラットという複雑な構造となっており、通常のシビックとは異なる取り付け方法となるため、時間管理されるシビックのサスペンションラインに流せない。そこで工場内の一角に専用製造スポットを設け、そこで専属の作業員がダブルアクシスサスペンションを手作業で約7分をかけてアッセンブリーに仕上げる。右用、左用の二手に分かれてラインに流せる状態に組み上げて並べている。あとは車体組み立てラインに搬入して車体に取り付けるのだ。
エンジン、前後サスペンションと車体のドッキングは全自動で、塗装ラインや室内架装の済んだ車体と組み合わさると初めて自動車としての姿に組み上がるのだ。
この後、完成車ラインで確認され、ラインオフする。
次に待っているのは実走試験だ。「VQマイスター」と呼ばれる最高クラスのテストドライバーが2速で60km/h、3速で120km/hまで速度を上げ、さらにスラローム走行を行ってフィーリングチェック。事前に取り決められたステアリングフィールレベルに仕上がっているかを全数テストする。
ほかのモデルでは行わない、まさにタイプRを名乗るための生産プロセスに組み込まれた実走テストであり、これをクリアして初めて市場に送り出される。
このように寄居工場は電気自動車からミニバン、ハイパフォーマンススポーツカーまでを同一ラインで一括生産する機能的な工場として今後のHONDAブランドを高め、維持して行く重要な拠点として位置付けられているのだ。