過去に挑戦はしているけど……軽とかリッターカーとかの小排気量ディーゼルが存在しないワケ (2/2ページ)

技術的には生産可能だが肝心なコストがかなりかかる

 しかしながら、ニッポンの伝統的には小排気量ディーゼルといえばダイハツを忘れるわけにはいかない。

 1980年代にダイハツ・シャレードに搭載された「CL」型 1リッター3気筒ディーゼルエンジンは、当時の世界最小排気量ディーゼルだった。のちに『ロックンディーゼル』というキャッチコピーで宣伝されるなど、ディーゼルをポジティブに捉えるムードを高めたエンジン、モデルとしても記憶に残る。

 シャレードのラインアップとしては廉価版として自然吸気バージョンがあり、パフォーマンス仕様としてターボディーゼルが用意されていた。筆者の経験は、かなり年式の経ったNAディーゼルの印象しかないのだが、残念ながらディーゼルに期待するトルク感を味わえるような代物ではなく、単に非力で振動の大きいエンジンという印象だった。

 そんなこともあって、ダイハツのリッター・ディーゼルは1990年代半ばには量産ラインアップから消えてしまった。それでも3気筒で1リッターということは、1気筒削って2気筒にすれば660ccになるはずで、軽自動車の規格が660ccになったことにはCL型エンジンの系譜が軽自動車用として蘇ることを期待する声は根強いものがあった。

 そんな過去もあってか、2003年の東京モーターショーにてダイハツ小排気量ディーゼルのDNAは、突然に復活を遂げた。

『TOPAZ 2CDDI(トパーズ ツーシーディディアイ)』と名付けられたディーゼルエンジンは、660ccの直列2気筒エンジン。しかも直噴・2サイクルであり、スーパーチャージャーとターボチャージャーによる過給&掃気システムを搭載という凝ったメカニズムで、コンセプトカー「ai」に搭載する設定だった。

 2サイクルだが、ヘッドはDOHC4バルブ。直噴方式、コモンレールシステムの採用により優れた燃焼性能を獲得し、大きな低速トルクと超低燃費を追求するという謳い文句だったが、軽自動車用のエンジンとしては、あまりにも高コストなメカニズムであることは明らかであり、量産エンジンとして陽の目をみることはなかった。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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